>>1の続き。


韓国の安全保障の中枢といえる役割を、永遠に米国へゆだねることができないのは明らかだ。ならば、戦作権移管のために何を準備すべきなのか。まず、北朝鮮の挑発へ効率的に対応するための韓米連合指揮システムを新たに構築しなければならない。また、韓国軍と米軍の役割も調整しなければならない。

戦争遂行機能における韓国の役割を拡大しなければならない。しかし、世界最強の戦力と実戦経験を有する米軍を代替することは容易ではない。中でも、米国が世界最高レベルの人工衛星・無人偵察機などによって韓国側に提供してきた北朝鮮関連の情報力を、韓国が独自に確保することが最大の課題に挙げられる。

現時点では、米軍の支援なしに北朝鮮の核・ミサイルの動向を正確に探知することは難しいというのが実情だ。連合司令部で米軍が中心的な役割を担っていたことから、韓国軍の力量の成長はのろのろとしたものだった。在韓米軍抜きの韓国軍の防衛能力は「目と耳をふさぎ、飛車角落ちで将棋を指すようなもの」と言われるほど。それだけ依存度が高い、という指摘だ。

戦作権の移管は「カネの問題」とも密接な関連がある。韓国国防部(省に相当)傘下の国防研究院と国防大学は、06年と11年にそれぞれ在韓米軍保有装備の価値を22兆ウォン(現在のレートで約2兆1700億円。以下同じ)、17兆−31兆ウォン(約1兆6800億−3兆1000億円)と評価したことがある。

これまで軍の装備が先端化されてきたことを考慮すると、経済的数値に換算した在韓米軍の価値はもっと大きくなるだろう。加えて米軍は、カネに換算できない「実戦経験」という資産まで有している。このために文在寅(ムン・ジェイン)大統領は、今のところ国内総生産(GDP)の2.4%に相当する韓国の国防予算を、任期中に2.9%の水準まで引き上げたいと言った。

北朝鮮の脅威は、5回にわたる核実験に続き大陸間弾道ミサイル(ICBM)級のミサイル発射にまで成功したことで、新たな次元へと差し掛かっている。核を持った北朝鮮は、韓国に対し、よりスピーディーな意思決定と軍事的力量を要求している。当面は戦作権を現在の状態にとどめておくことが、こうした変化に対応する上で適切だと言える。だからといって、いつまでも韓国の安全保障を米国に依存しておくことはできない。

答えは一つだ。戦作権問題を検討する際には政治的考慮を最小限に抑え、軍事的な備えの構築に焦点を合わせて議論を進めるべきだ。同時に、国防改革を通した強軍建設の作業に拍車を掛けなければならない。


>>おわり。