【ソウル=名村隆寛】日本の朝鮮半島統治下での元徴用工や元挺身隊員らの個人請求権は、1965年の日韓請求権協定で消滅している。

 しかし、2012年に韓国最高裁が「個人請求権は消滅していない」と判断して以来、韓国では日本企業を相手取った損害賠償訴訟で賠償を命じる判決が相次いでおり、もはや歯止めが利かなくなっている。

 今回、光州地裁が言い渡した原告(元挺身隊員ら)勝訴の判決は、文在寅(ムン・ジェイン)政権下では初。ただ、今回も12年の最高裁による判断に従ったもので、韓国での一連の流れに沿った判決とみるべきだ。

 三菱重工に限らず、1審での賠償命令判決を不服として日本企業側が控訴しようが、韓国の裁判所でそれは覆らない。52年前に日韓が合意した請求権協定であろうが、現在の韓国の司法判断の前では認められないのが実情だ。

 最高裁の判断は、保守派の李明博(イ・ミョンバク)政権下で出された。慰安婦問題に象徴される「日本との歴史」がからんだ問題は、すでに韓国では右派、左派に関係なく、日本が批判を受け反省するのが当然視されている。

 こうした社会的な風潮のなか、ソウルの日本大使館や釜山の日本総領事館前には慰安婦像に続き市民団体などが「徴用工像」を設置する動きが出ている。

 韓国外務省は5月初旬に、徴用工像設置について「外交公館の保護に関連した国際儀礼や慣行の面から望ましくない」と表明していた。だが、その直後に発足した文在寅現政権は明確な立場を示していない。

 財界をはじめとした日本側の懸念もよそに、徴用工や勤労挺身隊の問題に対し、韓国では異論が挟めない。文在寅政権下で放任が続くどころか、さらに蒸し返しが加速する可能性は十分にある。

http://www.sankei.com/world/news/170808/wor1708080037-n1.html
http://www.sankei.com/world/news/170808/wor1708080037-n2.html

http://www.sankei.com/images/news/170808/wor1708080037-p1.jpg
判決後、訴訟への思いを話す原告の李敬子さん(右)=8日、韓国南西部の光州(共同)