世界的ロックスター、スティングが6月に訪韓したとき、こんな感想を述べていた。

「5年ぶりに来てみると、市内にコーヒーショップがものすごく増えている。値段も高かった」

『韓国日報』が4月に報道したところによると、韓国国内には約9万店のカフェが存在するという。コンビニエンスストアが約5万4000店だというから、カフェがコンビニより約2倍ほど多い。

カフェがコンビニの数より多い

ソウル市だけを見ると、コンビニが約9500店、チキン店が7468店に比べ、カフェは約1万8000店。

日本ではよく「歯医者がコンビニの数より多い」というが、韓国では「カフェがコンビニの数より多い」というのが現実だ。

もはや飽和状態となっているカフェだが、入れ替わりも激しい。5年以上安定して経営を続けている店舗は全体の30.5%で、カフェ業界では「十中九亡」(10店中9店が潰れる)という言葉も登場した。

韓国が“カフェ大国”になったのは、シンプルに考えるとコーヒー好きの韓国人が多いからかもしれない。ただ、無視できないのは、いわゆる「鍋根性」(熱しやすく、冷めやすいこと)と言われる韓国特有の国民性ではないだろうか。

雨後の筍のようにカフェが増え続ける前に、韓国でよく見かけられたのはチキン店だった。チキンはデリバリーの定番メニューとして定着し、今や韓国人の幸せ指標を測定する手段にもなっている。

2016年にはチキン店舗数が全世界のマクドナルドの店舗数を上回るほど急増し、250社以上のチェーン店が登場した。

しかし、チキン店があまりにも増えてしまったため低価格競争を避けて通れず、最近は競争に敗れた店が次々に閉店を余儀なくされている。

「はちみつソフトクリーム」や「タピオカ入りドリンク」、昨年韓国に上陸した「台湾カステラ」なども、人気とともにチェーン店が爆発的に増えたかと思えば、程なくして消えていった。

特に台湾カステラは、半年も経たない間に17社以上のチェーン店が登場したが、一部の店でコストを削減するために賞味期限切れのクリームや安い粉末ミルクなどを使ったことが暴露され、ブームはあっけなく冷めた。

みんな一斉に流行に乗っかるも、競争のあげくに業界全体をダメにしたり、人気低迷と共に次々と潰れていくことを見ると、日本とは違う韓国の国民性がよくわかる。

ただ、一斉にやり始め、一斉に消えていくその国民性が必ずしも悪い方向に進むわけではない。

大事故が発生したときには全国民が一斉にボランティアに駆けつけたり、ワールドカップといったイベントがあれば世界を驚かせるような盛り上がりを見せたり、新しい産業を盛り上げる起動力になっているのも事実だ。

とは言っても、そんな国民性がブーム真っ最中のカフェ業界に不安要素になる可能性も否めない。今後、韓国のカフェ業界はどうなるのだろう。

(文=S-KOREA編集部)

http://s-korea.jp/archives/18715