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 だが、二つの国をまたぐ同路線をめぐっては、シンガポール、マレーシアの思惑が交錯。車両や地上設備の保有と運営を分ける上下分離方式を採用する見通しだが、建設主体はシンガポール側とマレーシア側で分かれることになりそうだ。

 また、中間駅の6駅は全てマレーシア国内にあるため、マレーシア側が各駅停車の路線を運行。直通路線をシンガポール側が運行するなど、運行事業者も分かれる見通し。

 年末にも入札が公示されると言われているが、2国間の足並みがそろわないため条件がなかなかまとまらず、時期がジリジリと後ろ倒しになっている。

 現状、17年末の入札公示後、18年末から19年初めに落札者が決まり、26年に運行を開始する計画。ただ、事業化に向けては流動的な部分が多々残されている。

 三つのプロジェクトで最も進捗(しんちょく)が遅れているのがタイだ。タイが進める四つの高速鉄道プロジェクトのうち、バンコク―チェンマイ間の670キロメートルに日本式の新幹線導入が決まっている。

 4路線のうち、バンコクから北東に向かうバンコク―ノンカイ間は中国が受注。タイでは二つの路線が重なるルートで線路の共有などを検討していたが、欧州式を採用する中国と日本式の新幹線では技術的な折り合いがつかず、6月に単独の路線となることが決まった。

 同プロジェクトは日本コンサルタンツがJICAから受注している事業性調査を17年中に取りまとめる予定。その後、本格的に事業化するかどうかは決まっておらず、タイ次第という状況だ。

 日本が高速鉄道の輸出において、一貫して各国にアピールしているのは安全性と定時性だ。これには政府が旗振り役となりながら、車両メーカーや鉄道事業者、商社などが連携する必要があり、日本は官民一体の取り組みを続けてきた。

 これまで実績がほとんどないため、コストを重視されるとどうしても不利になり、インドネシアでは受注に失敗した。今後の高速鉄道の輸出拡大のためにも、まず機が熟しているプロジェクトを着実に成功させ、実績を積み上げる必要がある。(文=高屋優理)

http://c01.newswitch.jp/index/ver2/?url=http%3A%2F%2Fnewswitch.jp%2Fimg%2Fupload%2FphpqqC2Ou_598f1f16e08bf.jpg
JR東日本は国際事業を強化。新幹線の輸出は事業成功の象徴となる(E5系新幹線)

(おわり)