北朝鮮の核・ミサイル開発を巡り、トランプ米大統領と金正恩朝鮮労働党委員長の威嚇の応酬がエスカレートする一方だ。

北朝鮮が国際社会の意向を無視して大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射実験を繰り返し、ICBMに搭載可能な小型核弾頭の開発に成功したとの米情報当局の分析が報じられたことから挑発がさらに激しくなった。

トランプ大統領は「世界が見たこともないような炎と怒りに直面することになる」などとの表現で威嚇する。「炎と怒り」は1945年に広島への原爆投下を発表したトルーマン大統領の言葉を想起させるものだ。

これに対し、朝鮮人民軍の戦略軍司令官は「火星12」4発をグアムの沖合30〜40キロの海上に同時に打ち込む具体的な攻撃計画案を明らかにした。北朝鮮は8月中旬までに計画を完成させ、「発射待機態勢で(金委員長の)命令を待つ」という。

火星12号は、島根、広島、高知の上空を通過すると言っている。防衛省はこれら地域に愛媛を加え、地対空誘導弾パトリオット(PAC3)を急きょ展開させた。

懸念されるのは、トランプ大統領、金委員長による「言葉の戦争」が双方のちょっとした行き違いから不測の事態に発展しかねないことである。朝鮮半島有事となれば、日本、韓国、中国が巻き込まれる恐れが現実のものとなる可能性がある。トランプ大統領と金委員長は挑発の応酬を直ちに辞めるべきだ。

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1950年の朝鮮戦争勃発の際、沖縄の米軍基地は出撃基地として機能した。

当時と違うのは安保関連法が成立していることだ。小野寺五典防衛相は10日の衆院安全保障委員会で、グアムが攻撃された場合、集団的自衛権を行使できる「存立危機事態」にあたり得るとの考えを示した。海上自衛隊のイージス艦から弾道ミサイルを迎撃する可能性に言及したものだ。

北朝鮮は在日米軍が攻撃対象であることを明言しており、沖縄も自動的に戦争に巻き込まれる恐れがある。

朝鮮半島の緊張は沖縄経済を下支えする観光にも影響を与えかねない。

2001年9月11日の米同時多発テロ後、沖縄の観光が急激に落ち込んだことは記憶に新しい。観光は平和であることが大前提だ。

周辺国にとっても沖縄にとっても平和的解決の道を探る以外の方法はないのである。

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奥武山陸上競技場で12日に開かれた県民大会でも、米朝の対立激化を危惧する声が上がった。翁長雄志知事は北朝鮮によるグアム周辺へのミサイル発射計画に触れ、「沖縄に基地を集中させることのリスクが軍事面からも出てきた。辺野古を唯一とする合理的な理由がいままさに問われている」と指摘した。

登壇した各団体の代表も「戦争政策をやめさせよう」「沖縄を世界に平和を発信する島にしよう」など緊迫する現状に懸念を表明した。

日本をはじめとする関係国は米朝に対話を促す外交努力を強めてほしい。

http://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/127004