東南アジア諸国連合(ASEAN)が今月で設立50年となった。

 いまや地域の平和と安定を図るために欠かせない存在だ。6億4000万人の巨大市場で、経済力は10年以内に日本と肩を並べるという予測もある。

 東西冷戦を背景にしたベトナム戦争が激化していた時代に、インドネシアやタイ、マレーシアなど5カ国が反共・親西側路線でまとまった。

 冷戦終結後に共産主義のベトナムなどが加わって現在の10カ国体制になった。反共イデオロギーから脱し、多様な政治体制の存在を認めて地域全体の協力を追求する組織への転換だった。

 そして、アジア太平洋地域の安全保障を協議するASEAN地域フォーラム(ARF)など多国間対話の場を次々と作ってきた。

 特定の価値観を押し付けず、対立の回避を図ることを旨とする。その柔軟な姿勢が、日米や中露といった利害の異なる多くの主要国を巻き込む流れを作ったのだろう。

 日本はこの間の発展に大きく寄与してきた。第二次大戦時の日本軍による侵略の記憶が戦後も残って反日感情が強かったことを受け、軍事大国にならないと約束し、経済協力を進めた。

 数十年に及ぶ努力がこの地域での日本の存在感を高め、現在の良好な関係を築いてきた。

 一方で半世紀を経た「結束」はいま、新たな試練に直面している。

 存在感を急速に強める中国への向き合い方という問題が大きい。

 中国と領有権紛争を抱える国と中国の経済支援に依存する国の間には深い溝がある。5年前の外相会議では南シナ海問題で各国の意見がまとまらず、共同声明の発表を見送るという初の事態に発展した。

 日本と中国で影響力の大きさを争うかのような場面も見られる。

 ただ、世界第2位の経済大国となった中国との協力強化は必然である。一方で日本の存在感も依然として大きい。ASEANにとっては結局、日中両国と適切な間合いを取っていくことが必要なのだ。

 そもそも緩やかな結束を通じて全体の利益を追求するのが身上の組織だ。その強みを生かし、したたかに発展を続けてほしい。

https://mainichi.jp/articles/20170813/ddm/005/070/055000c