(>>50のついでに)『イノセンス』INNOSENCE/2004年/日本つか押井守/100分
 
『攻殻/GITS』の続編。というか、「その後の公安9課」 さらにぶっちゃけると「バトーの悶々鬱々たる日々」w
前作ラストで少佐が「人形遣い」の提案をあっさり承諾、『結婚』してしまわれ、バトー茫然。
明らかな職務背任どころか、容疑者隠匿という犯罪までやらかして、自分のセーフハウスとどっかから調達した
少女型義体に匿った少佐には「この義体の説明を」(うろ覚え)と言われる始末。バトー報われないw
あげく「さ〜てどこへ行こうかしら〜ネットは広大だわ〜ん」と、自我の劇的拡大を満喫されてる御様子の少佐の
後姿で前作は終る。ここまでは概ね原作通り。だから押井がこれの続編を作ってると知った時には『攻殻機動隊2』
を映画化するのかと大方が思っていた。俺も含めて。※ちなみに士郎正宗は2のタイトルを『攻殻機動体』にしよう
と思ってたらしい。 さてと。
 
基本、常日頃から好きな子にコクれない男子高校生の如き煩悶に身をやつしていたおっさんとしては、そもそも
『少佐が誰かのプロポーズを受ける』という状況すら想定せずにと言うより、考えないようにして日々の業務に邁進
してたわけで、そこに『人形遣い』とか言う、ぽっと出のどこぞの馬の骨に少佐をさくっと持ってかれたんだから、
ショックと後悔は そらあもうでかい。要するにバトーは、良くも悪くも古い人間なのだ。
あれから少佐、なんも言ってこねえしよー。荒巻のオヤジは俺の報告書よく読んでねえしよー。トグサは呑気だしよー。
そんな感じだから、ガサ入れで済むヤクザ事務所を嬉々として壊滅させて憂さを晴らすっつか八つ当たりすんのも
まあ理解できる。しかし失恋して不機嫌な元傭兵で電子戦のエキスパートとか、始末悪いにもほどがあるわ。
 
で、義体を棄てて自身のクラウド化を嬉々として選んだ少佐に対して、バトーは『身体』をどうしても棄てられない。
彼が犬を、それもバセットという極めて世話の難儀な犬種を飼うのは、義体化によって本来の『身体』から乖離していく
自分のかわりに『身体の維持』を、もっとはっきり言えば『身体の維持に手間をかけること』自体を続けるためだろう。
結局のところ、バトーは自分の身体感覚を犬に仮託しているのだ。つまり、少佐が個性としての『人格を外部化した』のに
対して彼は個性としての『身体を外部化している』という対比の構図だな。少佐に対する単なる意地とも言えるけど、
古い奴なんだよその辺、なんか共感してしまうくらいにw 劇中、バトーの所作や佇まいが常にどこか哀しげに見えるのは
彼の選択にはたぶん『未来がないから』だし、彼自身がそれを分かっているからだろう。
前作ともにセリフにやや難解な引用が頻出するのは、この頃の押井芸として御理解いただくしかない。
 
というわけで、前作に比べると『イノセンス』は「とある職場の日常」に留まるごく矮小な話なのだが、前作から10年
近く経過してるぶん映像の技術的進化は凄まじく、『日常アニメ』にはあるまじきクオリティに仕上がってしまった。
 
※地雷率 / 前作同様、個人的大好物なので適用外
 
ところで スカヨハ攻殻まだ観てないんだが観たヒト  どうだった?