韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は、現在の状況を「6・25(朝鮮戦争)以降最大の危機」と呼んだ。正確な認識だ。北朝鮮の核と大陸間弾道ミサイル(ICBM)が完成もしくはその直前となれば、米国はこれを座視できない。

そうなると、何らかのけりをつけるしかなく、それがどういう状態につながるか、誰もはっきりと断言はできない状況だ。国際金融市場の動向までもが尋常でない。ところが韓国社会では、この危機に対処する国にふさわしいのかと思わせる出来事が、あまりに多く起こっている。

このごろ、北朝鮮は「グアム包囲射撃」を公言し、米国大統領は「炎と怒り」を口にしている。今では、米国最高位の当局者が日常的に「軍事措置」へ言及している。衝突が起こるとしたら、その舞台は韓半島(朝鮮半島)にならざるを得ない。

可能性は極めて低いとしても、韓国政府は緊張を保って状況を見守らなければならない。韓国軍の統帥権者は文大統領だ。ところが、この危機の最中に、大統領府(青瓦台)は軍の統帥権者が「映画を見て涙を流した」ことを明らかにした。

普段なら感動を与える場面といえようが、今のこの状況で、軍の最高司令官が映画館で流した涙を、なぜわざわざ公開までしないといけないのか。

今の韓国軍に、確固たる対北朝鮮警戒態勢以上の任務はあり得ない。ところが韓国軍内部で最大の懸案は「対北朝鮮」ではなく「公館兵パワハラ事件」だという。ほぼ全ての指揮官が、前線への心配ではなく、「自分について誰か通報していないだろうか」と戦々恐々としているという。

韓国陸軍がきのう、4つ星の将軍が出席する会議を招集したのも、軍事的な備えを話し合うためではなかった。議論されたのは、「公館兵事件」対策だった。住み込みで高級指揮官の官舎の家事に当たる「公館兵」へのパワハラは根絶すべきだが、物事には軽重、先後がある。

先週、大統領府国家安保室長と外相が同時に休暇を取ったが、この事実がメディアで報じられるや、休暇を取り消したり短縮したりした。これに先立ち、北朝鮮がICBM級のミサイルを発射した直後にも、大統領と首相、副首相がそろって休暇を取った。

どうかするとすぐ休暇を取り消す古い思考方式からは、もう抜け出さなければならない。しかし今は状況が違う。新政権では、6・25以降最悪の危機に対処することと新しい休暇文化、どちらが優先なのか。

文大統領はきのう、大統領府の会議で「韓半島で平和と安定を必ず守っていく」と語った。韓国国民全てが望んでいることだ。しかし平和は、物乞いと哀願では決して守れない。人類の歴史がそれを証明している。

韓国の軍統帥権者と全軍、内閣が、核とミサイルで平和を危うくし脅迫する北朝鮮に対する決意を見せてくれたらと思う。

http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2017/08/15/2017081500558.html

http://www.chosunonline.com/site/data/img_dir/2017/08/15/2017081500533_0.jpg
http://www.chosunonline.com/site/data/img_dir/2017/08/15/2017081500533_1.jpg