>>1の続き)

防衛省は米国の一定比率以上について、価格が上昇した場合の、コスト超過時における見直し枠組み
(米国のナン・マッカーディ法を参考)を導入しています。
http://www.mod.go.jp/j/approach/others/equipment/sougousyutoku/pdf/siryou/21_01.pdf

ですが両者は大きく異なります。米国のシステムはかなり厳格に運用されていますが、実は防衛省のものはかなり恣意的です。これらは装備品等のプロジェクト管理に関する訓令(H27.10.1)取得戦略見直し等について(H28.4.8)です。
http://www.mof.go.jp/about_mof/councils/fiscal_system_council/sub-of_fiscal_system/proceedings/material/zaiseia281020/03.pdf

ナン・マッカーディ法では見直しは四半期ごとで、重要な不履行基準見積もり比は15パーセント上昇(当初基準比30パーセント上昇)、とるべきアクションは 45日以内に、計画の変更の内容やその原因等の必要事項を記載した不履行通知書及び当該4半期の取得計画報告を議会(下院)に提出。

クリティカルな不履行は、準見積もり比は25パーセント上昇(当初基準比50パーセント上昇)で、とるべきアクションはコスト上昇の根本原因分析を実施し、事業を継続する場合、60日以内に、国防長官から議会(下院)へ同分析を提出するとともに、以下を証明し、承認の可否を問う。

・安全保障上の不可欠性
・事業のコスト増を賄う他の事業より優先順位が高いことの証明
・コスト・コントロールを実施する枠組み 等

継続の要件は、議会(下院)の承認が必要です。

対して防衛省のものですが、見直しは毎年度ごと。米国と比べて極めてスローです。そして重要な不履行基準見積もり比は15パーセント上昇(当初基準比30パーセント上昇)と同じですが、とるべきアクションは、
○ 防衛装備庁長官は、取得戦略計画の見直しについて、関係局長及び関係幕僚長等と調整を行う(通達§3?@)
○取得戦略計画の重要な事項に変更を及ぼすような見直しを行う場合は、装備取得委員会の審議を踏まえ、防衛大臣への報告又は承認が必要(訓令§16?A)

アクションまでの締め切りもなく、具体的な対処も決められておらず、国会への報告義務もありません。これで文民統制が効いているといえるでしょうか。

クリティカルな不履行は、準見積もり比は25パーセント上昇(当初基準比50パーセント上昇)で、これまた比率は米国と同じですが、

防衛装備庁長官は、取得プログラムを中止することが適当と認めるか否かについての防衛大臣の判断に資するため、関係局長及び関係幕僚長等と調整を行い、取得プログラムの継続の必要性について検討する(通達§3?A)

これまたアクションに対する締め切り無く、検討するだけです。そして継続への要件は、防衛大臣は当該取得プログラムを中止することが適当と認めるときは、その中止を命じる(訓令§17)

これまた国会への報告義務もなく、大臣の一存で決まります。システムとて中止する決まりがなく「官邸の最高レベル」への忖度がやり放題です。

仏つくって魂入れず、です。

しかも費用の一部を「初度費」に移すというインチキもやり放題です。初度費は本来、生産立ち上げの際にかかるラインの構築費やジグなどの購入費、ライセンス料などのことですところが実際はそういう名前だけで、実は100年でも継続して払い続けられます。

ですから現状手直しや不具合の直しなどもすべて「初度費」で延々と支払われております。

これまた「官邸の最高レベル」を忖度して、やっぱり買いますということになりやすい。

■防衛省が導入中か導入計画中の高額の装備品
・航空自衛隊・F35A戦闘機(42機)           約8278億円
・海上自衛隊・SH60K能力向上型ヘリコプター(約90機) 約5153億円
・陸上自衛隊・垂直離着陸ヘリコプター・オスプレイ(17機)約2347億円
・陸上自衛隊・新多用途ヘリコプター(約150機)    約2044億円
・陸上自衛隊・水陸両用車(52両)             約352億円

陸自のUH-Xが富士重工案の、UH-1の改良型に決まったのはグローバルホークやAAV7、オスプレイなどを入れたために、予算が枯渇したためでしょう。

本命だった川重案のエアバスヘリとの共同開発に決まっていれば、今後世界中に千機以上を販売することが可能であり、技術開発の意味でも意味がありました。

(続く)