【米駆逐艦衝突】相次ぐ米艦事故… オバマ政権の国防予算削減で即応能力低下か 対北ミサイル防衛に影響も

【ワシントン=黒瀬悦成】米海軍のイージス駆逐艦「ジョン・S・マケイン」がシンガポール沖でタンカーと衝突した事故は、米海軍の艦船が太平洋海域で関係した事故としては今年4件目となる。

トランプ大統領が「強い海軍の復活」を訴える中、専門家からはオバマ前政権下で国防予算強制削減に見舞われた海軍の即応能力の低下を懸念する声も出ている。

米海軍は、今回の事故と6月のイージス駆逐艦「フィッツジェラルド」による伊豆半島沖での衝突事故のほか、1月31日にイージス巡洋艦「アンティータム」が神奈川県横須賀市沖で浅瀬に乗り上げ、スクリューを損傷。5月9日にはイージス巡洋艦「レイク・シャンプレイン」が韓国漁船と韓国・鬱陵島沖の日本海で衝突事故を起こした。

自らも元海軍将校である共和党の重鎮、マケイン上院議員はトランプ政権発足直後の今年1月、米紙ウオールストリート・ジャーナルへの寄稿で、前政権下の2010〜14年に国防予算が21%削減され、軍の即応態勢が危機に陥ったと指摘。

トランプ氏はこうした声を受けて「米軍の再建」を打ち出し、海軍戦力に関しては現行の約270隻から「350隻体制」にすると表明した。

しかし、予算や艦船の建造体制の制約で実際に海軍力が強化されるまでには時間がかかると予想される中、海軍のFA18戦闘攻撃機が搭乗員への酸素供給システムに問題が生じて稼働率が低下するなど、一連の艦船の事故のほかにも作戦能力にかかわる複数の問題が浮上している。

マケインは、北朝鮮の弾道ミサイル迎撃任務を担って日本に配備されているイージス艦10隻のうちの1隻で、今回の事故で米軍のミサイル迎撃態勢に一時的に影響が出る可能性もある。

http://www.sankei.com/world/news/170821/wor1708210047-n1.html
http://www.sankei.com/world/news/170821/wor1708210047-n2.html


【北ミサイル】グアム米軍基地は「即応状態」 北が恐れたのは爆撃機だけではなかった…

西太平洋の米領の島、グアムは、米軍のアジア戦略の基軸といわれる。島内の空軍基地から2時間ほどで朝鮮半島に爆撃機を飛ばせる地理的要衝にあるためだ。

今月初旬に公表された弾道ミサイル発射計画をはじめ、北朝鮮が目の敵にする「米国の抑止力」の最前線を訪れた。(グアム 塩原永久、写真)

■「緊迫感」ない基地

翌日に米韓軍の合同演習を控え、北の挑発の懸念もあった20日。緊迫した空気が流れているだろうと想像したアンダーセン空軍基地には、拍子抜けするほどの「日常」が広がっていた。

午前10時をまわると、多数の自家用車が吸い込まれていく。基地内の店に買い物にきた軍人の家族だ。

「北朝鮮?心配ないわ。安く購入できる基地の中の雑貨店に行くの」と隣町からきたダーリン・イシプさん(36)は上機嫌だ。

一方で米軍は、基地内の別の「日常」も米テレビに撮影させていた。発射計画から数日後に放映された番組は、北の脅威となるB1爆撃機をこれ見よがしに紹介。「大統領が求める行動をいつでも実行できる」との幹部の声も伝えた。

「365日、いつでも戦い始められる」−。そんな張り詰めた即応状態こそが基地の「日常」なのだというメッセージだった。

■防空の砦と世界最大の弾薬庫

グアム島の面積は約541平方キロメートルと淡路島よりわずかに小さい。島に空軍基地のほか、原子力潜水艦が寄港する海軍基地もある。

http://www.sankei.com/world/news/170821/wor1708210051-n1.html

>>2以降に続く)

http://www.sankei.com/images/news/170821/wor1708210047-p1.jpg
石油タンカーと衝突したイージス駆逐艦「ジョン・S・マケイン」=21日(ロイター)
http://www.sankei.com/images/news/170821/wor1708210051-p1.jpg
グアム北西部で、「軍用犬チームの警戒地域」との警告が表示された米軍の看板。近くにTHAADが設置された軍用地があるとみられる=8月20日(塩原永久撮影)