◆民族の結びつき方◆

在日中国朝鮮族が第3回目の運動会を行った。30度を超える蒸し暑い日曜日、日本で暮らす彼らが子供を連れ、親を連れ、今や年に一度の民族集合の場となった運動会に2000人を超える家族連れが三々五々参集した。

移住先でのこのような生活形態は、移住民族がどれもそうであるように、自らの民族文化を支えにしたものである。そこで、彼らが他の民族と比較してどのような特徴があるのか、中国朝鮮族の民族文化の核となっている民族ネットワークの相対化を試みてよう。

まず、他民族との比較のために、海外に暮らす民族としてユダヤ人、華僑・華人、海外韓国人、在外日本人、在日中国朝鮮族を概括的にその民族ネットワークの特徴を整理しよう。

1358万人(2010年)と言われるユダヤ人は極めて優れた民族として知られる。世界人口の0・2%しかいないユダヤ人がノーベル賞の22%、フィールズ賞(若い数学者のすぐれた業績を顕彰)の27%を占める。

個人的にもピカソ、エジソン、アインシュタイン、ベートーベン、マルクス、イエスキリストなどからグーグル(検索エンジン世界一位 二人のうち一人がハーフもう一人はユダヤ人)、デル(独立系世界最大のパソコンメーカー)、

マイクロソフト(パートナーがユダヤ人、OS圧倒的世界一位)、インテル(CPU世界一位)などの創業者やCEOなどあげれば枚挙に暇がない。

ユダヤ人がなぜ世界一流の企業者として君臨しているのか?@マーヴィン・トケイヤー(『ユダヤ商法』著者)は、ユダヤ人の成功の根源的力は「恐るべき逆境の中から業を起こすこと」と言う。

Aマクドナルド日本支社長である藤田田著の『ユダヤの商法―世界経済を動かす―』は、彼らは数字に極端に強く、常に税金などを考えた上で、利益を上げることを第一優先に考える。さらに、彼らは迫害されても最終的に金があるものが支配すると考えたという。

こうしたビジネス能力は、長年の迫害下の中で民族が生きてゆくための知恵として蓄積されてきたのがユダヤ人ネットワークとも呼べる連帯意識であり、その特徴は世界的に広がるユダヤ人的な多分野拡大型ネットワークと定着先にしっかりと根を張った機能構築型のネットワークである。

つまり、その特徴は平板的拡大と構造的構築型と言えよう。

華僑・華人ネットワークは血縁、地縁そして業縁の三縁で結ばれている。その形状は渦巻き型と言われ、その円心に中心人物が存在し、中心人物は個人の財力、政治力、魅力などの要素が重要で、それに応じて新たな円心を起こし渦巻き型ネットワークを作る。

この渦巻きはいわば無限に拡大できるネットワークであろう。つまり、華人ネットワークは個人主義に支えられ、個人の力量を充分に発揮することができる。

そして渦巻きにいる人々は、誰でも気軽に別の渦巻きの人と連絡がとれるため、後述の日本型と異なり、必ずしも別の渦巻きの中心人物(リーダー)に通さなくてもよい。しかし、渦巻きは中心人物が凋落するとそのネットワークが収縮してしまうという弱点がある。

したがって、華人ネットワークは三縁を脈として個人を支配者とする特徴があるために浮沈の多いネットワークであると言える。

華人ネットワークは三縁を基礎にするパトリオティズム(望郷主義)を精神軸にするのに対して、コリアンネットワークは海外国民という名称にみられる様にナショナリズムを精神軸にする特徴がある。

在外国民が形成するコリアンネットワークは強い祖国愛(愛国心)に支えられている。愛国心はナショナリズムとパトリオティズムに大別され、ナショナリズム(国粋主義、民族主義、国家主義)とは、国家形成の過程でそこに帰属する国民としての価値を尊重するもので、その国民に帰属することが自らの最大価値とするもの。

コリアンネットワークは、国家へのベクトル(大きさと向きを考える量)と共にユダヤ人ネットワークにみられる定着先にしっかりと根を張る機能構築型のネットワークと言えよう。

韓国人が国家と家族に強い結びつきを示すのに対して、日本人は中間的組織・集団に強い結びつきを見せるのが特徴である。

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