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国内消費の先行きは厳しい

安倍内閣は経済の好循環を掲げ、大手企業の経営者に賃上げを呼びかけている。また、毎年、法定の最低賃金を大幅に引き上げており、東京などでは最低時給1000円時代が目前に迫っている。

緩やかながら賃金は上昇し始めているが、それにもかかわらず、消費が盛り上がらない。2万円を回復した日経平均株価も再び1万9000円台に戻って一進一退を続けており、株価上昇による「資産効果」の消費も生じていない。

百貨店売上高の中では、「資産効果」が現れやすい「美術・宝飾・貴金属」部門がプラスとなっているものの、アベノミクス開始直後のような2ケタの伸びにはなっておらず、消費に勢いはない。

この秋には年金保険料率がさらに引き上げられることが決まっており、個人の可処分所得は一段と減少する。雇用情勢など景気に明るさは見えるものの、消費増にはなかなか結びついておらず、政府が思い切った消費刺激策などを打たないと、百貨店の国内売り上げはさらに下振れするリスクもある。

そうなれば、中国人観光客を主とする外国人消費への依存度は、さらに高まることになるだろう。

磯山 友幸
硬派経済ジャーナリスト。1962年東京生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。日本経済新聞社で証券部記者、チューリヒ支局長、フランクフルト支局長、日経ビジネス副編集長・編集委員などを務め2011年3月末で退社・独立。
著書に『国際会計基準戦争・完結編』『ブランド王国スイスの秘密』など。早稲田大学政治経済学術院非常勤講師、上智大学非常勤講師、静岡県“ふじのくに”づくりリーディングアドバイザーなども務める。

(おわり)