新宿や銀座のデパートにあふれる外国人観光客。特に、急増する中国からの観光客を相手にする、中国人の専門ガイドが活躍しています。同じ中国人が異国の地で、お客と店員という立場に……。

1日で数百万円を使うお金持ちを相手にすると「正直、自分の時給と比べてしまうこともある」と言います。デパートのガイドから見える日本の風景について聞きました。

時給は1200円

話を聞いたのは、大連出身の白樺(バイ・ファ)さん(30)です。

白さんは、日本の大学を卒業後、免税カウンターや、化粧品売り場などで働いてきました。現在は、都内のデパートのガイドを派遣社員として勤めています。時給は1200円です。

白さんが勤めているデパートでは、毎日800人を超えるお客さんが、免税カウンターを利用するそうです。

「1日600人だと『リラックスモード』ですね。春節など観光客が多いシーズンは、1200から1500人が利用します。カウンターも普段の8から13に増えます」

免税カウンターでは、その場で商品をチェックし、税金を現金で返金しています。50万円以上の買い物をしたお客さんは「VIPルーム」へ。ちなみに、春節期間中は「VIPルーム」に通される額が100万円にアップするそうです。

袋に現金120万円

中国人の買い物客は、いったい何にお金を使っているのでしょうか? 白さんに聞いたところ、この1、2年間、中国のお金持ちの間で人気なのは、意外なアイテムでした。

「鉄瓶です。日本の鉄瓶は造形が美しく、鉄でお湯を沸かすことで、気軽に鉄分の補給にもなるので人気です。中国人向けに、20万円から30万円の鉄瓶が売られています」

そして、白さんは「今でも覚えている」という、ある中国人観光客の買い物について話してくれました。

「上海からきた観光客でした。120万円の鉄瓶を気に入って、買おうとしたんです。でも、クレジットカードにトラブルがあって、その日は買えませんでした」

「次の日、その観光客は袋に現金120万円をドンと持ってきて、買えなかった鉄瓶を購入したのです。周りの日本人スタッフさんも、びっくりしました。さらに、そのお客さんは、隣の、すず製品の売り場にも行き、30万円以上の商品を購入していきました」

銀製品も人気

鉄瓶のほかにも、銀のイオンが健康にいいと言われていることから、銀製品も人気だそうです。

白さんは、300万円の銀瓶をはじめ計800万円近くの買い物をしたお客の相手をしたこともあるそうです。

「爆買いが終わったとよく言われていますが、高級デパートでは、このような買い物は毎日続いていますよ。中国のお金持ちは、品質にこだわる傾向があります。彼らは『日本の商品は品質が良い』とかたく信じている感じですね」

化粧品売り場はストレス

中国人観光客に対して、デパートの店員はどのように受け止めているのでしょう?

白さんによると、高級デパートの高級日用品売り場は、中国人観光客も基本的教養が高く、礼儀正しい人が多いそうです。

「日本人の従業員も、お客さんに合わせた高い水準のサービスを提供していると思います」

一方、化粧品売り場は、バスで訪れるツアー客が訪れるため、客層がバラバラで、中にはマナーが悪い人もいるそうです。

「人混みの中で、ウェブ中継をする『ネットセレブ』は、やめてほしいですね」

忙しくストレスがたまりやすい化粧品売り場。白さんは、接客に余裕のない日本人販売員と働いたこともあると言います。

「たまたまかもしれませんが、中国人観光客だけでなく、私のような通訳のガイドへの態度もよろしくない日本人スタッフがいて……」

結局、白さんは、その売り場に派遣される仕事を断ったそうです。

「その売り場の中国人ガイドのほとんどが短期間で辞めていました。日本人従業員からすると、業務量が多いのに給料が増えないなど、不満があるのは理解できますが。日本のデパート全体のイメージが悪くなる恐れがあると思いました」

https://withnews.jp/article/f0170823000qq000000000000000W02310301qq000015587A

>>2以降に続く)