>>1の続き)

6月には韓国へのTHAAD配備に対しても大いに難色を示し一度は追加配備を中断させた中国であったが、総じて朝鮮半島統一シナリオは中国にとっても、前述の米国にとっても受け入れられにくい可能性がある。

最後に、このシナリオは結果的に日本にとってもワーストシナリオになると考えられる。短期的には、朝鮮半島統一に向けたインフラ整備需要の獲得など、日本にとってのビジネスチャンスが訪れる可能性もあるが、あくまでも一時的なものにとどまろう。

中長期的には、新生朝鮮半島が世界の貿易面で大きくクローズアップされることになり、日本の輸出入は減少していくことになろう。「日本素通り」状態に陥ってしまうことにもなりかねない。

さらに、半島統一後の韓国と北朝鮮がまとまっていく過程で「反日感情」が利用される可能性は非常に高いだろう。その際には、朝鮮半島との外交交渉はまとまらず、日本の対外政策に対しても、ことごとく否定されるような状態にもなってこよう。

日本に敵対する「核」保有の近隣国として、強烈なプレッシャーともなり得よう。

朝鮮半島統一を株式市場が好感するのは極めて短期間にとどまる可能性が高い。新生朝鮮半島の誕生により、日本は貿易のみならず金融市場においても「素通り」状態となってしまう可能性がある。

日本の貿易黒字減少で為替は円安方向に向かうと見られるが、むしろ「キャピタルフライト」の様相を呈することになりそうだ。株式市場もシナリオ1のような暴落はないにしろ、浮上感が見出せないまま、最も長期的な低迷状態に陥ることになろう。

■フィスコ 世界経済・金融シナリオ分析会議の主要構成メンバー
フィスコ取締役 中村孝也
フィスコIR取締役COO 中川博貴
シークエッジグループ代表 白井一成(※)

※シークエッジグループはフィスコの主要株主であり、白井氏は会議が招聘した外部有識者。

(おわり)