>>1の続き)

ツイ: 盗んだというのは当たらない。あえて言うなら技術交換だ。中国では改革開放が始まって以来、市場を介して技術交換を行うという戦略を取ってきた。スイスの技術が盛り込まれた製品は、シーメンスやABBといったテクノロジーコンツェルンによる輸出を通じて中国にもたらされている。

どんな分野であれグローバル経済においては、外国の技術を一から十までそのまま取り入れるというケースはほとんどない。一から学ぶ必要はないのだ。だが、高速鉄道の技術がいったん取り入れられた時に、それを我が物にできるかどうかが問題だ。

その意味で、中国の鉄道は成功例と言える。その発展の根底には絶え間ない技術革新と生産力の向上、そしてコストパフォーマンスにおいて国際的なレベルに見合う競争力を維持する力がある。

スイスインフォ: 高速鉄道は中国政府によるプロパガンダの道具という意見があります。

ツイ: 中国には鉄道車両の製造販売で世界最大手とされる国営企業が2社ある。中国政府は高速鉄道車両の輸出を推進し、それを国の「顔」としたいがために、この2社に非常に重きを置いている。こういった国の財源をバックにした受注攻勢は、当然西側先進諸国の反発を招く。

中国鉄道業界が国際市場を攻略するつもりならば、「大きさ」のみで勝負するのではなく、国際市場のルールを守りその慣習に従うことの大切さを、中国側の責任者たちが理解する必要がある。

また、国営企業においては深部にまでおよぶ改革が必要。さもなければ効率や経営・組織のレベルアップは望めない。一方、スイスでは中国製高速鉄道のシェア拡大はまずないと見ている。

スイスインフォ: その理由は?

ツイ: スイスの面積は中国の地方一つ分ほどしかなく、今でもジュネーブ・チューリヒ間は3時間ほどで移動できる。高速鉄道用路線新設の必要性は低い。

スイスインフォ: スイスと中国の2国間協力関係の将来について。いつか中国製列車がゴッタルドベーストンネルを走る日は来ますか?

ツイ: 中国の鉄道産業が国際的に果たす役割は大きく、技術面や品質面では欧州製品と互角だ。将来、中国製列車がゴッタルドベーストンネルを走ることになっても個人的には少しも驚かない。

スイスにも鉄道ビジネスで中国市場を過小評価すべきでないという認識はある。鉄道車両の開発で両国の提携が実現する可能性はかなり高いだろう。


スイス製車両 vs 中国製車両
欧州の中心に位置するスイスでは早くから鉄道が発達した。「鉄道網の密度」と「発着時間の正確さ」においては世界一。移動の手段として鉄道が使われる割合も最も高く、住民1人あたりの移動距離は年間平均2449km。
一方、中国の鉄道網は総延長14万kmで米国に次いで世界で最も長い。高速鉄道網に絞れば世界最長で、高速鉄道網の整備により国民の移動事情は激変した。建設にあたっては欧州や日本から先進技術を多く取り入れた。

(おわり)