2017年8月25日、午後2時半。韓国のソウル中央地裁で歴史的判決が出る。被告人は、サムスングループのオーナー家3代目である李在鎔(イ・ジェヨン=1968年生)サムスン電子副会長だ。

求刑は12年。「サムスンが大統領に賄賂を送った」という巨大事件に裁判所はどんな判断を下すのか。

最大最強の財閥の3代目の裁判。それも、賄賂を送ったとされる相手が、朴槿恵(パク・クネ=1953年生)前大統領ということで、今回の裁判に対する国民の関心は高い。

テレビ生中継は不発だが、傍聴券は事前抽選

ソウル中央地裁は8月23日、判決公判のテレビ生中継をしないという方針を発表した。

大法院(最高裁判所)は最近、国民の関心が高い重要裁判についてはテレビ生中継を許可するとの方針を示していた。李在鎔副会長の判決公判についてはその最初の例になるという観測もあった。それほど関心が高かったのだ。

前日の8月22日、25日の判決公判の傍聴券の「抽選会」を開いた。これまでの公判については「先着順」だったが、25日の判決に対しては関心が高い。8月7日の求刑の際には、法廷に入ろうとした特別検事に対して水がかけられる騒ぎにもなった。

地裁は無用な混乱を避けるために異例の「事前抽選会」を実施した。一般傍聴席は30だが、454人が傍聴を希望し、「競争率」は15倍だった。

朴槿恵前大統領に対する賄賂罪などで逮捕。起訴された李在鎔副会長に関する論告求刑公判で特別検事は、懲役12年という重刑を求めた。

論告求刑公判では涙

最終陳述で李在鎔副会長は、涙声で無罪を訴えた。

「今日のサムスンがあるのは、すべての従業員、さらに多くの先輩たちの血と汗の努力があったからです。創業者である私の先代会長、そしてサムスンをグローバル企業に育てた会長の後を継いで・・・」

李在鎔副会長は、創業者であり祖父である李秉普iイ・ビョンチョル=1987年死去)氏、さらに意識不明のままの状態が続いている父親、李健熙(イ・ゴンヒ=1942年生)会長について語りながら、涙で声を詰まらせた。

大統領に対する賄賂容疑で逮捕され、拘置所に入ってからすでに半年近く。懲役12年という求刑を前に、「無罪だ」という悔しさとともに、「先代に会わせる顔がない」という感情から、思わず、涙が出たようだ。

それほど厳しい求刑だった。特別検事の主張はこういうことだ。

朴槿恵前大統領と李在鎔副会長は、2014年9月から2016年2月までの間に3回、単独で会っている。この際、朴槿恵前大統領は、長年の知人である崔順実(チェ・スンシル)氏と、その娘である乗馬選手、チョン・ユラ氏を支援するように要求した。

経営権継承作業で大統領の支援が是が非でも必要だったサムスン側は、高額な馬や練習場を支援した。さらに崔順実氏が設立にかかわったとされる財団に資金を拠出した。

最初の単独会談の4か月前の2014年5月、李健熙会長が自宅で倒れ意識不明の状態になった。サムスン側は、李在鎔副会長への経営権継承を急ぐ必要が生じ、これを「請託」し、その対価が、資金支援だったというのだ。

5つの罪で懲役12年求刑

特別検事は、5つの罪状で懲役12年を求刑した。「賄賂の提供」「横領」「財産の海外不法送金」「犯罪隠蔽」「国会での偽証」の5つだ。賄賂に使われた資金は、サムスングループ企業から横領した。ドイツで乗馬訓練を受けるチョン・ユラ氏に馬を購入するために不法送金した。

犯罪を隠蔽するために馬の名前を変えるなどの工作をした。国会聴聞会で、崔順実氏などは知らないなどと証言した。こういう罪だ。

サムスングループの経営権継承と大統領の職務権限がどう関係するのか?特別検察の見方はこうだ。

李健熙会長が倒れて以来、サムスングループは李健熙会長から?在鎔副会長への継承作業を急いだ。その最大の案件が、サムスングループの企業である第一毛織とサムスン物産との合併だった。

サムスングループといっても、圧倒的に利益も時価総額も大きいのがサムスン電子だ。李在鎔副会長はこのサムスン電子の株式をほとんど保有していない。

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/50879

>>2以降に続く)