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日韓徴用工問題 文氏に再考を求めたい

韓国の文在寅(ムンジェイン)大統領が先週、朝鮮半島出身者らが日本の植民地時代に労働に動員された徴用工に対する補償問題で、韓国人の日本企業への個人請求権は消滅していないとの見解を表明した。

日本政府は1965年の日韓請求権協定で解決済みとの立場で、韓国政府も同様の認識だった。文氏の発言はこれを覆すものだ。

北朝鮮情勢が緊迫する中で、この問題が火種となり日韓関係が悪化することは双方の利益にならない。文氏に再考を求めたい。

韓国最高裁は2012年、請求権協定によっても個人請求権は消滅していないとの判断を示した。

文氏は「政府はこの立場から歴史問題に臨んでいる」と述べ、政府の見解でもあると明確にした。問題解決へ「日本の指導者の勇気ある姿勢が必要だ」とも述べた。

しかし請求権協定で日本から支払われた3億ドルの無償資金について韓国政府は05年、「強制動員の被害補償問題を解決する」ものだとして、日本政府の補償措置は決着済みとの見解を示していた。

協定の対象外とした従軍慰安婦や在韓被爆者らとは分けて整理していた。当時は盧武鉉(ノムヒョン)政権で、首席秘書官を務めていた文氏は当然知っている経過だろう。

それが司法判断を理由に立場を変えた背景には、慰安婦問題を巡る日韓合意に対する反発を含め、歴史問題での日本に対する強硬な世論があるとみられる。

さかのぼれば、軍事政権時代に結んだ日韓基本条約と請求権協定には、日本の植民地支配について謝罪もなかったことなどへの不満が底流にあるのだろう。

そうした国民感情は日本も真摯(しんし)に受け止めなければならない。

だからこそ、韓国、中国などへの植民地支配と侵略に「痛切な反省と心からのおわび」を表明した村山談話をはじめ、歴代政権は歴史への反省を示してきた。

安倍晋三首相も戦後70年談話で「こうした歴代内閣の立場は揺るぎない」と述べている。過去への反省は、今後も日本がアジア外交を進める上での大前提である。

ただし、そのことと、両国が一度決着を確認した補償問題とは別に考える必要がある。

文氏は「歴史問題が未来志向的な発展の障害になってはいけない」とも述べ、安全保障や経済の問題とは切り離す姿勢も示した。

両首脳は対話を重ねる中で、摩擦を解消し、さまざまな分野で協力を拡大していく関係の構築について知恵を絞ってほしい。

https://www.hokkaido-np.co.jp/article/127513

(おわり)