東京・六本木ヒルズアリーナで5月、新譜のリリースイベントを開いたのは、韓国のヒップホップグループ「防弾少年団」。ファンや関係者、約2500人の前でダンスと歌、日本語でのトークを披露した。

10カ国・地域でワールドツアーを展開中の彼らのファン層は10〜20代半ばの女性が中心。音楽業界では「今年、日本で大ブレイクが期待できる韓国男性グループの筆頭」との見方が強く、女性誌を中心に注目が高まっている。

防弾少年団は2013年に韓国、日本では14年にデビュー。今年5月にポニーキャニオンからユニバーサルミュージックに移籍し、その第1弾シングル「血、汗、涙」は発売初週の販売が30万枚を突破(サウンドスキャン調べ)した。

16年3月発売の前作「RUN」(13万枚強)の2倍強で、この1年で人気が急に高まっていることがわかる。

19歳から24歳の男性7人グループの防弾少年団。その名には「同世代に向けられる抑圧や偏見を止め、自身たちの音楽を守りぬく」という意味がある。そのメッセージは、彼らが奏でるヒップホップソングのラップのリリック(歌詞)にも込められる。

13年の韓国デビューアルバム「2 COOL 4 SKOOL」に収録された「NO MORE DREAM」では「お前の夢は何だ?」「お前の鏡には誰が映っているんだ?」と、夢と現実の間でもがく若者の気持ちをラップで表現。

「リーダーのRAP MONSTER(ラップモンスター)とSUGA(シュガ)が、作詞・作曲を担当し、自分たちで楽曲のプロデュースを手がけていることが特徴。

自分たちの思いを等身大でラップに込めることで、同世代のファンの共感を得ている」(ユニバーサルミュージックのプロモーション担当者)

同アルバムで、韓国の音楽レースの新人賞を総なめにし、16年に韓国で発売したアルバム「WINGS」は75万枚のヒット(所属事務所の発表数字)と韓国で同年最大のヒットになった。全米ビルボード200でも韓国アーティストとして史上最高の26位に入った。

米国でも知られるようになり、今回の移籍で防弾少年団はかつてはリアーナ、現在はジャスティン・ビーバーらが在籍するヒップホップ界の名門レーベル「Def Jam Recordings」に所属する。

担当者によると、歌の魅力に加えて、「7人が一糸乱れずシンクロして踊り上げるダンス」も人気の理由だという。Youtubeに自らのダンス映像を700本以上公開し、中には再生数が1000万回を超えるものもある。

メンバー7人が書き込むツイッターのフォロワー数は570万を超え、プロモーションの核になっている。

今後、日本でのプロモーション展開にあたっては、「米国での実績があるため、韓国アーティストではなく、『洋楽アーティスト』として、その特徴を生かしたい」と担当者は語る。

5月には「スッキリ!!」(日テレ系)と「めざましテレビ」(フジ系)に生出演した。韓国、米国に続き、日本でもCDセールスをどこまで伸ばし、存在感を高めるか。音楽業界が注視している。

(「日経エンタテインメント!」7月号の記事を再構成。敬称略。文/白倉資大)

https://style.nikkei.com/article/DGXMZO19869990Q7A810C1H40A00