『九月、東京の路上で‐1923年関東大震災ジェノサイドの残響』(14年、ころから)の著者、加藤直樹さんは、小池知事の発言に「衝撃を受けた」と次のように語った。

「関東大震災は東京に住んでいる朝鮮人が都民によって殺された。流言飛語の拡散に加担したのは行政であり、都は虐殺に向き合う責任がある」「都は『このような不幸な出来事を二度と繰り返さない』という意味を込めてこれまでメッセージを送ってきたはずだ。今年から追悼文の発送をやめたということは、逆のメッセージになってしまうのではないか」

千葉県八千代市で「関東大震災と朝鮮人虐殺事件」を調査し、追悼・慰霊に取り組んできた平形千惠子さんも「追悼文は毎年、慣例的に送付してきた」との小池知事発言に「なんと無責任な言葉でしょうか。昨年の追悼の辞も心からのものではないということですね」と憤りを隠さない。

「排外主義の側に立って再び繰り返す道を歩むのか、あるいは追悼文で触れたように世代を超えて語り継いでいくのか。小池知事はその選択を間違えないで今年は心を込めた追悼の辞を出して下さい」と要請した。

小池知事は追悼文を断った理由として表向き「関東大震災で犠牲となられた全ての方々への追悼の意」を表す都慰霊協会の大法要への出席を挙げた。「関東大震災時に虐殺された朝鮮人の遺骨を発掘し追悼する会」の矢野恭子さんは「自然災害犠牲者とジェノサイド事件の犠牲者とは別の追悼の意が表されるべきではないのか」と疑問視した。

加藤さんは、古賀都議が工藤美代子氏の著書『関東大震災 朝鮮人虐殺の真実』を引用し虐殺はなかった”殺されたのはテロリストで正当防衛だった≠ニした主張を「荒唐無稽」と批判した。このことは加藤さん自ら参加する「民族差別への抗議行動・知らせ隊+チーム1923」がインターネット上で詳細に検証している(http://01sep1923.tokyo)。

加藤さんは古賀都議に小池知事への質問を依頼したのは「在日特権を許さない市民の会(在特会)」と近い関係にある「そよ風」(「日本を愛する女性の会」)と見ている。群馬県内の「群馬の森」の朝鮮人追悼碑などを「反日碑」として撤去を自治体らに働きかけているグループだ。

加藤さんは「小池知事が追悼文を出さないことで『そよ風』は『虐殺は嘘なんだ』と言いやすくなった。ロビー活動を重ねて次は、横網町公園での追悼式典そのものをつぶしにかかるだろう。最終的に狙っているのは朝鮮人犠牲者追悼碑の撤去だ」と危機感を強めている。

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関東大震災朝鮮人犠牲者式 歴史の風化許さず

東京都の小池百合子都知事が墨田区の都立横網町公園で毎年9月1日に営まれている「関東大震災朝鮮人犠牲者追悼式典」(同実行委員会主催)への追悼文の送付を今年は断った。「東京新聞」が24日付で速報し、各紙が続いた。

追悼のメッセージは歴代都知事が踏襲し、昨年は小池知事も送付していた。方針転換を重く見た民団中央本部は25日、小池知事に追悼文の送付を要請する呉公太団長名の文書を送った。

小池知事が追悼文の発送を断ったのは今年3月、都議会一般質問に立った古賀俊昭都議(自民党)の発言がきっかけだった。

古賀都議は、横網町公園内の朝鮮人犠牲者追悼碑に刻まれた「流言飛語のため6千余名」の朝鮮人が虐殺されたとした文言を「歴史の事実と異なる数字や記述」と述べ、追悼辞の再考を求めていた。

朝鮮人虐殺犠牲者数「6千余名」は追悼碑建立の73年当時、研究者の多くが使っていた数字であり、現在の研究水準であれば異論もある。しかし、虐殺の事実そのものは日本政府も認めている。

それだけに民団中央本部としても要請文のなかで「犠牲者数の多寡を理由に追悼辞を断ってはならない」と強調。なぜならば、追悼辞は「彼らを悼み、再発を防ごうとする気持ちを表す心の問題だから」だ。そのうえで、虐殺の事実を覆い隠そうとする潮流に断固たる姿勢を堅持するよう求めた。

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>>2以降に続く)