テレビに映るオレンジ色の噴射炎は、怖くもあり、悲しくもある。ミサイル発射を繰り返す北朝鮮を20年前の夏、取材で訪ねたことがある。

街のあちこちに政治的なスローガンが掲げられ、指導者の巨大な像に兵士らが敬礼する様子には、息苦しさを感じた。一方で、ほとんど報じられない普通の人々の姿には、親近感を持つことができた。

小学校では、遅刻しそうになって駆け込む子もいたし、サッカーボールを夢中で追いかける子もいた。通訳をしてくれた平壌外国語大の女子学生は「いつか日本に行き、有名な電機メーカーの工場を見たい」と目を輝かせていた。

北朝鮮出身の夫と共に、戦後間もなく海を渡った日本人妻にも会えた。「生きているうちに、もう一度、祖国の土を踏みたい」という彼女の夢はかなうだろうか。

日本も北朝鮮も互いに「脅威」でなくなればいい。笑って交流できる日を、多くの人が待っている。 (江田一久)

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