先日の本欄で「石」氏が田辺市の児童数の推移から過疎化の深刻さを論じていた。人口減少がいかに憂慮すべき問題かということについて、私も考えてみたい。

▼人口問題の権威で日本国際交流センター理事の毛受(めんじゅ)敏浩氏はその著『限界国家』(朝日新聞出版)で「人口の激減という大津波がそこまで迫っているのに、政治家もマスコミも危機意識が非常に薄い」と嘆いている。

▼一極集中の東京も例外ではない。私は交通至便、緑豊かで高齢者には最適のまちとされてきた東京郊外の都市に住んでいるが、近所でいま異変が起きている。若者、子どもの急減で、高齢世代の持ち家を業者が新、改築しても売れないそうだ。今後20年もすれば、日本全体で年間20万人が孤独死する時代が来るともいう。

▼小、中、高の廃校数は北海道、東京、岩手が上位3傑。交通網の崩壊は全国で進み、民間バスの7割、地域鉄道の8割が赤字という。

▼政府は地方創生を掲げているが、人口減少が本格化する10年後、20年後の姿に誰も成算はない。「最終選択はやはり移民の受け入れしかない」と毛受氏は断言するし、私もそう思う。

▼これは史上ほとんど未経験の決断だ。人種、言語、宗教の違う他者との共存がいかに困難かは、経験豊富な欧米で起きている摩擦を見れば分かる。他者への寛容は国民にどんな試練を生むか。日本人も生き残りをかけた真剣な検討を迫られる。 (倫)

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