北朝鮮の脅威に対する日本のスキが目立つ。8月26日早朝の飛翔体発射の際は「失敗」「短距離」という情報によって過小評価し、政府の対応や報道が明らかに弛緩した。

そのわずか3日後には中距離弾道ミサイルが日本上空を通過するという「これまでにない深刻かつ重大な脅威」(安倍晋三首相)が襲い、列島は動揺した。

北がグアム方面でなく日本に向けて発射したのは、軍事行動も厭わない米国と違って「安全パイ」であるからに他ならず、「日本越え」が常態化する恐れも出てきた。

トランプ米大統領は22日、金正恩朝鮮労働党委員長について「彼がわれわれを尊重し始めているという事実を尊重する」と述べた上で、「恐らく何か良いことが起こるだろう」と楽観視していたことを思い出すが現実は違った。

とはいえトランプ氏を責めるのは筋違いだ。緊張は米朝間のことで、日本はそれほど関係ないといった無責任な態度が蔓延しているが、完全に打ち砕かれた。

北朝鮮は26日、南東部の江原道旗対嶺付近から日本海に短距離弾道ミサイルを発射した。1発目と3発目が約250キロ飛行し、2発目は爆発したとしている。

菅義偉官房長官は同日、「わが国の安全保障に直接影響を与えるものではなかったと」と述べた。発射の一報で、官邸には菅氏が駆け付けたが、中長距離弾道ミサイルが発射された場合のような記者会見や、官邸幹部の緊急参集は見送られた。

その3日後、北朝鮮は日本時間29日午前5時58分、首都平壌の順安区域付近から中距離弾道ミサイル1発を北東方向に向けて発射した。ミサイルは、北海道・渡島(おしま)半島と襟裳(えりも)岬の上空を通過した後、6時12分、襟裳岬東方約1180キロの太平洋上に落下した。

安倍首相は29日午前に官邸で開いた国家安全保障会議(NSC)関係閣僚会合の後、記者団に「政府としてはミサイル発射直後から、ミサイルの動きを完全に把握しており、国民の生命を守るために万全の態勢を取ってきた」と述べた。また、トランプ米大統領と電話会談し、北朝鮮への圧力をさらに高めていくことで一致した。

トランプ氏は29日、声明を発表し、「北朝鮮の最新のメッセージをはっきりと受け取った。近隣国や全ての国連加盟国を侮辱した」と北朝鮮を非難した上で「脅迫行為は地域や世界中で孤立を招くだけだ。全ての選択肢がテーブルの上にある」と話した。

30日にはツイッターで「対話は解決策にはならない」と怒りを表したが、トランプ氏もいい加減、北が絶対に譲歩はしないことを学ぶべきだろう。

日本政府はミサイル防衛(MD)態勢の強化を図っているが、北朝鮮の脅威を抑止する上で限界が明白になってきており、「敵基地攻撃能力保有やミサイル迎撃態勢の一層の強化の早期検討を求める声が強まりそうだ」と30日付産経新聞は解説している。

現在のMDは、日本海上に展開する海上自衛隊のイージス艦の海上配備型迎撃ミサイル(SM3)が大気圏外で迎撃し、撃ち漏らした場合に空自の地対空誘導弾パトリオット(PAC3)が高度数十キロの上空で着弾直前に迎撃する二段構えをとる。だが、弾1発が5億円と高価なPAC3を全国各地に配備することは困難だ。

より高高度での迎撃も態勢は十分とは言い難く、イージス・アショア(イージス艦の迎撃システムの地上配備型)の導入による態勢の強化や敵基地攻撃能力の保有が与党内で議論されてきた。

敵基地攻撃能力の保有には、命中精度を上げるための衛星利用測位システム(GPS)の運用や敵基地の位置情報把握のための偵察衛星などの装備体系が必要だが、日本は保有していない。

朝鮮中央通信は30日、ミサイル発射について中距離弾道ミサイル「火星12」の発射訓練と報じた。

金氏は、発射が「侵略の前哨基地であるグアム島を牽制するための意味深長な前奏曲だ」と指摘。8月上旬に米領グアム沖へ火星12を4発発射する計画を公表後、金氏が「米国の行動を見守る」と述べ、計画は依然、有効であることを明言した。

http://www.sankei.com/politics/news/170902/plt1709020012-n1.html

>>2以降に続く)