【北京=城内康伸】北朝鮮が今年四月ごろ、原油や石油製品の年間輸入量の半分から三分の二に相当する石油百万トンを備蓄する目標を、金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長がトップを務める国務委員会で決定した、と北朝鮮関係者が明らかにした。核やミサイル開発に対する国際社会の制裁強化で、石油禁輸や輸入制限が拡大する事態に備えたとみられる。

この関係者によると、政府機関の閣僚専用車など公用車に対し、一カ月当たりのガソリン供給量が制限されているという。関係者は「幹部級の公用車が通勤に使うだけで精いっぱいの状況も起きている」と指摘。不足分は民間業者から調達するという。

首都・平壌(ピョンヤン)では四月、給油所の営業停止が突然広がり、深刻なガソリン不足が発生し、価格が急騰。価格上昇はいったん沈静化したが、別の北朝鮮消息筋によると、最近は再び値上がりしているとされ、北朝鮮当局が市場への供給を制限している可能性がある。

また、北朝鮮は八月、東部の元山(ウォンサン)で今月二十三日から二日間、予定していた航空ショーを中止。国連安全保障理事会の制裁決議で航空燃料の輸入が制限される中、燃料の浪費を避ける狙いとの見方が出ている。

韓国の研究者などによると、北朝鮮は年間百五十万〜二百万トンの原油・石油製品を輸入していると推算される。原油の九割以上を中国産に依存しており、中国は統計に表れない形で年間五十万トン以上を供給しているとされる。

北朝鮮が八月二十九日に北海道上空を通過する中距離弾道ミサイル「火星12」を発射したことを受け、日本政府は米国などと連携し、安保理を通じた石油禁輸を含めた追加制裁をめざしている。

北朝鮮は今年に入り、二十発近くの弾道ミサイルを発射し、今後も発射を続ける構え。六回目の核実験を準備しているとの観測もある。原油や石油製品の輸入制限が拡大される事態を想定し、備蓄を急いでいる可能性がある。

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