日本の核武装論が活発な米国とは対照的に、日本では政府・与党ともに核兵器の保有を議論する動きはみられない。北朝鮮の核・ミサイル開発への対応として話題になるのは、ミサイル防衛(MD)強化や敵基地攻撃能力の保有にとどまっている。

政府の現行憲法解釈では、核兵器の保有を禁止していないとしているが、非核三原則を堅持している上、核拡散防止条約(NPT)を締結している。原子力基本法は核利用を平和目的に限定しており、これまでの政府答弁書も「核兵器を保有し得ない」と明記している。

安倍晋三首相は3月31日の参院本会議で「わが国が核兵器を保有することは、およそあり得ない」との認識を示した。

ただ、安全保障政策立案を担当する政府関係者は「いつでも核武装できる能力を持つことは必要だ」と訴える。米国が日本に「核の傘」を提供しているのは、日本が核武装することで周辺諸国が核兵器を求める「核ドミノ」を防ぎたいとの思惑もあるからだ。

その米国は相次ぐ北朝鮮の弾道ミサイル発射を踏まえ、2月の日米両首脳の共同声明で、約42年ぶりに核拡大抑止力の提供を明記した。8月17日にワシントンで行った日米外務・防衛担当閣僚による安全保障協議委員会(2プラス2)も同じ表現を共同発表に盛り込んだ。

日米外交筋は「日本を安心させることで、核保有の必要性を感じさせないようにする側面があった」と語る。

核兵器の保有をめぐる議論は、非核三原則の見直しにつながるとして、世論が強く反発するのは避けられない。

実際、第1次安倍内閣時代の18年10月には、自民党の中川昭一政調会長(当時)が核武装について「議論は当然あっていい」と発言すると、野党や一部マスコミは中川氏を激しく批判した。日本は核保有はおろか、その是非を論じることすらできないのが現状だ。(杉本康士)

http://www.sankei.com/politics/news/170903/plt1709030003-n1.html
http://www.sankei.com/politics/news/170903/plt1709030003-n2.html


【北ミサイル】「日本の核武装議論、抑止力高めることに」 伊豆見元・東京国際大教授

北朝鮮はすでに、米国に届くミサイルを完成させることが可能だと証明している。日本が攻撃を受けた場合に、北の報復を恐れ米国が反撃を躊躇(ちゅうちょ)する懸念が生じれば、米国の「核の傘」に穴が開くことになる。自前の核武装について、日本として真剣に議論すべき時期にさしかかっている。

武装の可否のみならず具体的に核弾頭を搭載するミサイルをどうするのか、配備にどの程度時間がかかるのかなど、議論の対象は多岐にわたる。在日米軍基地に戦術核を配備させることも選択肢の1つとなる。

当然「非核三原則」を掲げ反対する意見も出るだろう。しかし、議論自体がタブー視されるべきではない。日本が北の脅威を深刻にとらえていることの証明になり、抑止力を高めることにつながるためだ。

普通に考えれば北朝鮮が核攻撃をするわけがないが、完全には信用できないというのがわれわれの立場だ。北朝鮮も同様に、議論によって「日本の核武装はありえないが、確実ではない」という思考になる。

これ以上北の核ミサイル開発を放置することは許されない。核武装議論はもとより、対北取引を前提とする交渉などあらゆる方策を検討すべきだ。(談)

http://www.sankei.com/politics/news/170903/plt1709030002-n1.html

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北朝鮮の労働新聞が30日掲載した、弾道ミサイル「火星12」の発射訓練の写真(コリアメディア提供・共同)
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伊豆見元・東京国際大教授