北京の夏は「乾熱」と呼ばれる。例年は気温が40度に迫っても湿度が低いため、日陰や風は涼しささえ感じる。しかし、今年は雨が多く、蒸し暑かった。在住韓国人の雰囲気も天候同様に息苦しかった。

国民とのコミュニケーションを強調する大統領が終末高高度防衛ミサイル(THAAD)問題をめぐる外交ではただ時間を浪費するような態度を見せ、失望と不満が募っているのだ。

現代自動車の中国工場は、サプライヤーが納品代金の未払いを理由に部品供給を中断したため、操業中断にまで発展した。政権が変われば韓中関係が改善するのではないかとの期待はもはや影も形もない。

期待が急速にしぼんだのは、イ・ヘチャン特使の訪中直後からだ。中国政府の態度がそれ以降強硬になったことは、韓国企業が身をもって体験している。

THAAD配備をめぐり、右往左往していた文在寅(ムン・ジェイン)政権は曲折の末、結局はTHAAD配備を決定した。在住韓国人社会からは「こうなるなら、むしろ真っ先にTHAAD配備を既成事実化した方がましだった」との批判が聞かれる。

中国の評価も冷ややかだ。韓国の新政権が掲げた「戦略的あいまいさ」をめぐり、「韓国の大統領は習近平主席の前での発言とトランプ米大統領と話す内容が違うのか」と不満を募らせる。

「話が通じない」という評価とともに、中国に無視された朴槿恵(パク・クンヘ)政権の対中外交と比較しても、混乱してばかりで決断を下せずにいるわけで、現政権の対中外交がより高得点を得られるかは疑問だ。

今年1月、当時野党だった共に民主党の議員団が「事大外交」論争のさなかに訪中し、中国の王毅外相らと会見した。筆者は当時、訪中団で中心的な役割を果たした議員と個人的に会い、「北朝鮮の核問題とTHAAD問題をどう解決するのか」と尋ねた。議員は「我々が政権を取れば、すべて解決できる」と答えた。

「どうやって」という質問にも、議員は「とにかく私たちがやればできる」と話すだけだった。文在寅陣営のあふれる自信が感じられた。しかし、わずか半年で明らかになった現実は、彼の言葉が単なる「希望的観測」だったことを示している。

著名な国際政治学者、ジョン・ミアシャイマー・シカゴ大学教授「悲しいことに国際政治は常に冷酷で危険だということだ」と話す。

ポーランドと並んで韓国を世界で地政学的に最も不幸な国として挙げるミアシャイマー教授は「世の中を自分たちの望みではなく、あるがままに見ることが重要だ」と指摘した。今の与党がよく考えるべき指摘ではなかろうか。

中国の国際政治専門家は「韓中関係の苦境はTHAADが直接原因だが、根本的原因は韓国社会が過去25年の中国の変化に全く準備ができていなかったところにある」と指摘した。中国は今この瞬間も変化している。

今年秋の第19回共産党大会が終われば、習近平国家主席は文在寅大統領が今年7月にドイツで会った際よりもさらに強硬な統治者になっているはずだ。政権初期の試行錯誤を経た文大統領のTHAAD・対中外交がまさに試されていると言える。

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北京=李吉星(イ・ギルソン)特派員

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