「以貌取人」(いぼうしゅじん)という言葉がある。これは「容貌だけでその人の能力や品性を評価する」という意味だ。話す内容を聞いて判断する「以言取人」という言葉もある。孔子の弟子の子羽は姿が醜く孔子に嫌われたため、自ら孔子の下を離れて勉学に励み、後に有名な学者となった。

同じく孔子の弟子だった宰予は見かけが非常に良く言葉遣いにも優れていたが、言葉と行動が食い違い、さらに反乱を起こしたため後に殺害された。孔子は「私はその人の話す言葉で判断したため宰予を失い、外見で判断したため子羽を失った」と反省し、その後は弟子たちを正しく指導したという。

人間を判断するときは外見や言葉遣いを基準とすべきではなく、内面的な資質を持って判断すべきという話だ。

韓国政府はいわゆる「ブラインド採用」に取り組んでいる。公共機関などが新規に職員を採用する際、出身地や家族関係、学歴、学校での成績などは考慮せず、「実力」を中心に評価するというのがその趣旨だ。

ただその一方で「印象が良く、口がうまい人間が面接で有利になるのでは」といった懸念の声も出始めている。しかしこれは採用する側がどういう意志をもってこの採用に取り組むかの問題だ。採用する側が志願者の外見よりも内面、言葉よりも態度や人間性を見抜いて判断できるかに懸かっているのだ。

「他人よりも良く見せようとする言葉やこびへつらう態度」のことを「巧言令色」というが、今こそそれを見抜ける能力が必要だ。「ブラインド採用」が若い世代にただ迎合する「巧言令色の公約」になってはならない。

イ・ドンジンさん(ロッテ冷凍元代表取締役)

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