「秋の味覚」として知られるサンマの北西太平洋の漁場への来遊量が、前年を下回るという見通しが発表された。日本の主な漁獲対象となるサンマの分布量は、なんと前年に比べ、半減するという。元々の量が少なくなると、水揚げ量も減って価格も高くなるのではと心配になってくる。中国の漁獲量が年々増えていることも気になるところだ。「庶民の味」は大丈夫なのか。

国立研究開発法人「水産研究・教育機構」が8月に発表した今年度の「サンマ長期漁海況予報」によると、主要な漁期の8〜12月に漁獲対象となるサンマの分布量は前年の121・9万トン(157・4億匹)から、今年は約半分の59・5万トン(96・3億匹)に半減すると見積もった。

日本に近い海域の分布量は前年を上回ったが、比較的遠い海域で著しく減少した。このため、近い海域のサンマが来遊する漁期前半(10月上旬まで)は前年を上回るが、漁期後半(10月中旬以降)は前年を下回ると予想した。

なぜ、今年はサンマの分布量が減るのか。水産研究・教育機構東北区水産研究所資源管理部の木所英昭研究グループ長は「すぐに回復するのであれば環境によるもの、すぐに回復しないとなると、まだ解析は進んでいないが外国船がサンマを獲っていることの影響もあるのかもしれない。そのどちらか、または両方が関係しているのではないか」と話す。

各国のサンマの漁獲量を比較すると、かつては日本のシェアは8割を超えていたが、近年は3割台に減少している。2016年は台湾がトップで、日本、中国、韓国、ロシアの順で続く。中国は漁獲量で見ると日本の半分程度だが、12年の2014トンから16年には6万3016トンと30倍以上に増やしている。

来遊量が減ったうえ、各国の漁獲競争が激しくなると、気になるのは価格だが、前出の木所氏は「漁期前半は前年を上回ると予想されるため、近年価格が高い中で9月に価格がそれほど高くなることはないのではないか」とみる。漁期後半には来遊量の減少が予想されているが、もともとサンマがやせて価格が下がる時期にあたり、価格は高くならないと予想されるという。

将来的にサンマは絶滅するようなことはないのか。木所氏は「サンマがどんどん減ったり、乱獲が急に進むというようなことは今のところ、ないのではないかという評価になっている。ただ、今後環境が変化したりした場合に、今のままでいいのかは再検討しなければいけないだろう」と話す。

サンマをめぐっては、7月の北太平洋漁業委員会(NPFC)の会合で、日本が国・地域別の漁獲枠新設を提案したが、強く反発した中国に韓国とロシアが同調し、合意できなかった。将来にわたって資源を守るためには、漁獲枠を設けることは必要と思われるが、状況はどうなのか。

東京海洋大の勝川俊雄准教授は「日本としては早く規制が必要だろうが、中国にとっては規制をのむメリットが見当たらない。その状況で、『合意してください』といっても難しいだろう」と指摘した。

果たしてサンマの将来は−。

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水揚げされるサンマ。今年は何回食べられるか