国際社会の不安と脅威が極限に近づく中、過去最大規模の爆発力を持つ核実験を強行した北朝鮮。危機の度合いはさらなる未知の領域に入った。

核実験の一報を受けた3日午後、関係省庁は慌ただしく対応に当たった。防衛省では職員が相次いで登庁。幹部からは「やりたい放題だ」「北朝鮮の能力は向上するばかり。正直手詰まりだ」との声も漏れた。

同省は空自機を投入して日本周辺空域で大気中からちりを収集。専門機関で放射性物質を調査したが異常値は検知されなかった。

警察庁も同日、警備局を中心に情勢を判断し、朝鮮総連など国内の北朝鮮関連施設への警戒と情報収集の強化を指示した。幹部によると、トラブルは確認されていない。

わずか5日前、ミサイルが上空を通過した北海道えりも町では、漁業、金丸重幸さん(65)が「核弾頭を装備したミサイルが飛んできても、逃げ場がない。身勝手な軍事行動は許せないし、やめてほしい」と話した。

核・ミサイル開発で核保有国としての地位を得て、米国から体制保証の確約を引き出したい金正恩政権。米国はこれを認めない立場だが、ここに来て「核保有国」容認論も出現。北朝鮮が主張する「核弾頭で米本土を直撃する」との脅しが、米国に動揺を与える。

こうした国際情勢は拉致問題を抱える日本に影を落とす。国際社会の関心が核・ミサイル問題に集中する中、拉致問題が置き去りにされかねないとの危機感が募る。

救う会の西岡力会長は、核爆弾の威力が強化され小型化も進んだ可能性を指摘し「相当深刻な事態だ」と強調。「米朝も含めた交渉の枠組みに拉致問題の解決を強力に押し込まなければならない。被害者を救出する勝負の時だ」と指摘する。

福井県立大の島田洋一教授は日米連携の重要性を指摘するとともに、北朝鮮への制裁を順守しない国への政府開発援助(ODA)の取り下げや、出稼ぎ労働者を受け入れる国外企業の排除徹底など「圧力の強化へ、日本も独自に突き詰められる取り組みはまだある」と語る。

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北朝鮮が核実験し、官邸に入る防衛省の河野克俊統合幕僚長(右)=3日午後、首相官邸(宮崎瑞穂撮影)

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