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続き。
平成26年8月には、人民日報系「環境時報」は「琉球の帰属は未定。琉球を沖縄と呼んではならない」と題する論文を掲載した。

 中国の沖縄に対する公式見解は「帰属は未定で解決しておらず、日本が明治時代に沖縄県を設置して強奪した」というものだ。

 山田氏は警鐘を鳴らした。

 「中国と翁長氏は対になって沖縄の独立に向けた世論調整を行っている。中国と手を結んで沖縄の独立を図っていく流れのなかで、翁長氏がどっぷりと先頭に立っている」

 山田氏は、中国は沖縄独立に向けた工作に加え、尖閣諸島を含めた沖縄を奪うために(1)世論戦(2)心理戦(3)法律戦−の「3戦」を用いていると分析。「(版図拡大のために)中国には沖縄を中立化、無力化させておく必要がある。武器を使わないで相手(日本)を屈服されることを仕掛けてきている」と強調し、言葉を継いだ。

 「琉球新報と沖縄タイムスも、中国の戦略の片棒を担いでいる」

  歴史戦には歴史戦で

 ところが最近まで日本政府の対応は極めて鈍かった。

 第1次安倍内閣は平成18年11月、鈴木宗男衆院議員(当時)が提出した「琉球王国の地位」をめぐる質問主意書に対し、こんな答弁書を閣議決定していた。

 「沖縄はいつから日本国の一部であるか確定的なことを述べるのは困難だが、遅くとも明治初期の琉球藩設置とこれに続く沖縄県の設置のときには日本国の一部であったことは確かだ」

 つまり琉球処分後は日本の一部であるが、それ以前は分からないというのだ。

山田氏が28年10月の参院外交防衛委員会で政府側の見解をただした際も、岸田文雄外相(当時)の答弁はそれを超えるものではなかった。

 講演で山田氏は語気を強めた。

 「中国は日本のもっと以前から琉球を支配していたと言っているのに、これではけんかにならない。もともと沖縄は日本の一部を構成していたと主張しないと、中国の宣伝戦にやられてしまう」

 「尖閣諸島にしても、竹島にしても、日本海の呼称にしても、『国際法上は確定している』というのが日本外務省のいつもの反応だ。国際法で正当であっても相手には関係ない。日本がなめられるだけだ」

 「向こうが仕掛けてくる歴史戦には歴史戦で堂々と反論し、粉砕しなければならない」

  動かぬ証拠

 山田氏は28年10月の参院外交防衛委員会後、中国との歴史戦に勝つために外務省と調整を重ねた。「歴史戦という戦争に勝てる“武器”を探せ」と、外務官僚たちに、はっぱをかけた。彼らは省内に残る歴史的文書を徹底的に洗い直した。

 「成果」は大きかった。山田氏は講演で「日本の琉球統治を示す膨大な資料があったが、当時、明国や清国が琉球を統治していた歴史的証拠はひとつもない」と明言し、日本の琉球統治を示す、外務省発掘の「動かぬ証拠」をこう列挙した。


続きます。