9月3日12時31分頃、北朝鮮北部でM6.3の地震が発生した。
その震源は核実験場がある北東部の豊渓里で、後に北朝鮮政府は、大陸間弾道ミサイル(ICBM)搭載用の水爆実験が完全に成功したと発表した。
この核実験場は活火山である白頭山から約110kmしか離れていないため、かねてより科学者たちは大規模な火山噴火を誘発する懸念を表明してきた。
そこで今回は、1000年前に世界最大級の噴火を起こした白頭山がもしも核実験の影響で大規模噴火を起こしたら何が起きるのか、じっくり考察してみたい。

■白頭山の超巨大噴火、なぜ知られていない!?

白頭山(朝鮮語:ペクトゥサン、標高約2744m)は、中国と北朝鮮の国境に位置する巨大火山である。
過去には1597年、1688年、1702年、1903年と噴火を繰り返してきたが、さらに遡ると、10世紀前半(946年頃)に約1万年の眠りから覚め、過去2000年間で世界最大級ともいわれる巨大噴火を起こした。
この時、火山灰は偏西風に乗って日本の東北地方にも降り注いだという。
最新の研究によれば、火山灰は遠く北極圏のグリーンランドにまで到達していたことがわかっている。

しかし、なぜこのような大災害が世界であまり知られていないのだろうか。
それは、当時の朝鮮半島が戦乱の時代であり、混乱のなかで詳細が記録されていなかったことに起因する。
また、当時の日本は平安時代中期だったが、火山灰が降ってきても、それが一体どこから降ってくるのか皆目わからなかったというのが実態のようだ。

■世界中の学者が懸念を表明する白頭山大噴火

そもそも、各国の科学者たちは昨今、白頭山が近い将来噴火する可能性があると警告してきた。
21世紀に入ってから活発な火山活動が見られ、群発地震や山頂の隆起も相次いで確認されているのだ。
そのような状況下、2006年から北朝鮮が始めた核実験が白頭山の火山活動に影響を与える危険性について、米中韓の専門家たちが次々と指摘するようになった。
ロシア非常事態省は、すでに第1回目の核実験直後から、白頭山に噴火の兆候が見られると発表している。
そして2016年2月には、韓国の研究チームが同様の発表を行っているが、核実験場から白頭山まで約110kmという距離では、「中規模以上の地震で十分に影響を及ぼし得る」とした。

また、ロシアの地震学者アレクセイ・リュブシン氏は、地下の核爆発によって生じる波動がマグマに影響を及ぼし、噴火を誘発する可能性を指摘している。
さらに昨年5月、米国のシンクタンク「ランド研究所」の上級アナリストであるブルース・ベネット氏が、「核実験の規模によっては白頭山が噴火する恐れがある」と警告した。
ベネット氏は、実際に起これば「間違いなく大噴火になるだろう。
中国と北朝鮮の両国で、数万人とは言わないまでも数千人の死者が出る恐れがある」(CNN、2017年5月2日)と語る。
しかし、北朝鮮が国際社会で孤立しているため、火山の状態に関する科学的な知見が十分に得られず、噴火した際の被害想定も未知数となっているようだ。

■噴火の影響で政治体制にも大変革か!?

ただ確実なのは、白頭山の噴火により北朝鮮は大災害に見舞われ、周辺国にも火山灰が降ることで農作物の不作などさまざまな被害が予測されることだ。
10世紀の巨大噴火では、遠く離れた日本にも火山灰が5センチほど降り積もっている。
規模によっては、富士山の噴火を上回る甚大な被害が待ち受けているかもしれないのだ。
いざ噴火となれば、火山灰は偏西風に乗って数時間後に日本国内、とりわけ東日本に到達する可能性が高いといわれる。
首都東京に積もるような事態となれば、日本経済に大打撃を与える可能性も考慮しておくべきだろう。

元韓国国防省北韓分析官で拓殖大学国際開発研究所のコウ・ヨンチョル研究員は、北朝鮮はきちんとした防災体制を整備できていないため、噴火が起きれば未曾有の人的被害や経済的損害が発生するとし、「金正恩(キム・ジョンウン)第1書記の求心力も急速に失われて政権は大きなダメージを負うことになる」「北朝鮮の国力低下で、韓国がイニシアチブを握って朝鮮半島の統一が一気に進む可能性もある。
ただ、その場合でも政情不安で大量の難民が発生し、中国や韓国、日本に大量に流入する。
混乱は東アジア全体にまで波及するリスクをはらんでいる」(zakzak、2014年11月8日)と警告する。

白頭山の位置
http://tocana.jp/images/Hakuto_2.jpg
白頭山頂上
http://tocana.jp/images/Hakuto_3.jpg

http://tocana.jp/2017/09/post_14379_entry.html

※続きます