>>1の続き)

だが、TCMは実際には、屠氏がノーベル賞を受賞するに至った研究に、インスピレーションを与えただけだ。ノーベル委員会もこの点を強調する。伝統的な医療の効果が認められるようになる場合は常に、その背後に確たる医療メカニズムが存在している。

TCMの推進は、環境に打撃を与え、絶滅危惧種の生存を危険にさらすリスクを増幅しかねない。チベット高原では、一獲千金を狙う者たちがTCMで珍重される死んだいも虫を探して草原を破壊している。

このいも虫に寄生する菌類がTCMにおいて人気なのだ(公式には使用が認められていないものだが)。この菌類の価格は、同じ重さの金よりも高い。この薬剤が性欲を活性化させる証拠はない。

南アフリカの草原地帯(サバンナ)では角を切り取られたサイの死骸が横たわっている。サイの角は関節炎に効くとされており、粉末にして利用される。中国にあるTCMの闇市場では1kg当たり数千ドルが相場だ。こうした例は枚挙にいとまがない。

TCMの振興を図るよう習氏を突き動かしている動機の一部は政治的なものだ。熱烈な愛国者、かつ中国文化を擁護する者とみられることを願っている。だが、効果の定かでない治療法に助成金を支給するよりも、科学の進展を支援するほうが、中国にもたらすものは大きいだろう。

(おわり)