これは決して架空の問答ではない。百田氏は以前、「TVタックル」で、国防の大切さを訴えて、「国防軍と言うのは、家にたとえれば鍵のようなものだ」と発言したことがあった。この時、共演していたのは、菅沼栄一郎氏。「ニュースステーション」でもお馴染みの元朝日新聞記者である。

百田氏に対して、菅沼氏はこう言った。

「鍵と言うなら、今のままで十分だ」

百田氏は、今の憲法で縛られている自衛隊では不十分だという意味で、

「もっと丈夫な鍵にしようということです」

と言った。すると、菅沼氏は、こう答えた。

「丈夫な鍵を付けると、相手はそれを壊すために、もっと強い武器を用意する(だから、鍵は弱い方がいい)」
 
百田氏は呆れてしまい、それ以上、議論する気が起きなかったという……。

菅沼氏の論理でいけば、北朝鮮の核開発もミサイル開発も、周辺国が丈夫な鍵を付けたからだということになるのだが、果たしてそんな事実はあるのだろうか。

百田氏が護憲派に転向する日は、はるか遠そうである。

ミサイルよりも反原発

なお、余談ながら、件の社説は結論近くでさらに論理を飛躍させている。

「そもそもミサイルが現実の脅威なら、なぜ原発を直ちに停止し、原発ゼロに政策転換しないのでしょう」

社説の表現を借りれば、北朝鮮を利用して、原発の脅威を「ことさらにあおり」、「反原発世論」を盛り上げようとしているようにも見えてしまうのである。

デイリー新潮編集部