>>1の続き)

友人の一人は証人尋問に立った。学校のこと、自分たちのことを語るのに、身元が明らかにならないようにと遮蔽(しゃへい)板で覆われなければならないという異常な状況だった。

「私たちの本当の姿を知ってほしいと勇気を訴えたのに一体、何を聞いていたのか。いや聞き流していただけだったのか」

大阪で認められたものが、なぜ東京では認められないのか。国家という見えざる手のひらの上で心をもてあそばれているようで、込み上げる怒りに体を震わせた。

重なる歴史

麻生氏の発言から一夜、ツイッターには賛同の投稿が相次ぐ。

〈私はちっとも、問題発言とは思っていないし、思えない。自分たちの身の安全を守ることが先、なんてことは当たり前。油断してたら、こっちが殺される、と思う〉

〈何で騒ぐ? 敵が武装して上陸しようとしたら武力で鎮圧する。麻生副総理の言葉は世界の常識〉

救いを求めてやって来る難民がいつの間にか「敵」に変換されている。疑わしいから殺してしまえ。やられる前にやってしまえ。インターネット上の言説に94年前、「朝鮮人が暴動を起こす」という流言をもとに市井の人々までが手を染めた、関東大震災における朝鮮人虐殺が重なる。

虐殺は大災害による混乱の中、偶発的に起きたものではなかった。流言を信じたのは、日本による植民地支配で荒廃した朝鮮半島から生きるために海を渡った人たちへの蔑視があった。搾取し、迫害していたからこそ、いつ報復されるのではないかという身勝手な恐怖心を抱いていた。

朝鮮半島における独立運動の高まりから、テロリストを意味する「不逞(ふてい)鮮人」という、いまでいうヘイトスピーチが新聞紙上に躍り、憎悪と恐怖があおられていた。軍隊と警察までがデマを信じ、凶行に及んだ。


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(おわり)