韓国政府は、日本でおつまみなどとして人気がある国産ノリについて、代表的な輸出食品として育成する方針を示した。日韓関係の悪化などでしぼみつつある韓流ブーム復活の切り札としても期待されている。ただ、過去に問題となった食品汚染が完全に払拭されたとはいえず、日本人に愛されるメード・イン・コリアになれるか正念場を迎えている。

9月12日の聯合ニュースなどの報道によると、韓国の海洋水産省はノリ産業を2024年までに年間輸出額10億ドル(約1120億円)規模の食品産業として育成するための戦略と課題を盛り込んだ「ノリ産業発展策」を報告した。

具体的には、@世界的なノリの需要拡大A持続可能で環境に優しい生産基盤づくりBアイデアと技術力に基づく高付加価値の創出−の3つの基本方向を掲げた。

韓国産のノリはここ数年、海外で低カロリーのスナックとして人気を集めており、輸出額は07年の6000万ドルから16年には3億5000万ドルに急増している。韓国の主要輸出食品の即席麺や高麗ニンジンの輸出額を上回っているという。

日本では、零細事業者を保護するためにノリの輸入数量枠を設定している。しかし、韓国側が貿易障害だとしてWTO(世界貿易機関)に提訴する動きを見せたことから、日本側が輸入数量枠を段階的に引き上げている。

5月21日の聯合ニュースは、日本で韓国産ノリの人気が高まっていると伝え、「日本では最近、ノリの生産者減少に伴い、国産ノリの価格が上昇していることから、韓国産ノリの人気が高まっているとみられる」と分析している。

米国でも日本と同様、韓国産の味付けノリがおやつや酒のつまみとして人気だという。ハーブ味や辛子を効かせた味など、現地向けに改良したことが奏功している。

しかし、日本の消費者が韓国産ノリへの不信感を抱かざるを得ない“事件”があった。

2月中旬から3月下旬にかけて、日本海沿岸各地で大量のポリタンクが漂流。ポリタンクの多くには、ハングルや「過酸化水素」の表示があり、社名が記載されていた韓国の化学メーカーは「ポリタンクの不法投棄には、韓国のノリ養殖に伴う塩酸の不法な使用が関わっている」と説明した。

不法使用の詳細は以下の通りだ。韓国では、ポリタンクが業者にリサイクルされず、塩酸を詰め替えて違法に販売されるケースが後を絶たないといい、この塩酸でノリの養殖などで使う網を消毒しているという。

しかし、塩酸の使用は法律で禁じられており、昨年から今年にかけて、韓国当局が取り締まりを強化した。そこで、養殖業者がポリタンクを海洋に投棄し、日本に漂流したのではないかというのだ。

環境省では06年度から日本海沿岸への廃ポリタンクの漂着状況を調査しており、11年度は9723個、12年度は5457個、14年度は1万4465個を確認している。

韓国産ノリをめぐる安全性の問題はこれだけではない。14年9月、中国の衛生当局は国内に輸入された韓国産ノリから基準値を超える発がん性物質が検出されたことを明らかにした。海洋汚染か、生産、加工、包装のいずれかの段階で汚染された可能性がある。

韓国でも食の安全に関する意識が高まっている。朝鮮日報の9月19日付記事によると、韓国の養鶏場で、出荷前の鶏から基準値を上回る殺虫剤成分が検出された。衛生当局は、これまで一部の養鶏場だけで無作為に選んでいた検査を全農家に対して実施することにした。

韓国産ノリについても、ポリタンクの大量漂着の原因究明や再発防止を進めない限り、政府が掲げる「環境に優しい生産基盤づくり」という目標は絵空事に終わるだろう。(経済本部 鈴木正行)

http://www.sankei.com/premium/news/171003/prm1710030003-n1.html

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映画「プルコギ」の公開初日あいさつでバースデーケーキに見立てた韓国海苔巻きの山をのぞき込む出演者の松田龍平さん(左)と山田優さん(中央)=2007年5月、東京都渋谷区