習近平政権の5年間

日本では解散総選挙と北朝鮮危機が2大トピックだが、中国では「十九大シフト」である。「十九大」とは18日から北京で開かれる第19回中国共産党大会のことだ。この共産党大会を経て、習近平政権、2期目の5年が始まる。

「十九大」の開幕に先駆けて、8月28日から、中国中央テレビ(CCTV)が6日連続で、『大国外交』と題した6回シリーズの特別番組(各回45分)を放映した。この5年間、習近平主席がいかに「偉大な外交」を行い、中国人民及び世界の人々に幸福と繁栄をもたらしてきたかを振り返る「官製ドキュメンタリー番組」だ。

外国人である私が見ると、「偉大な習近平主席のおかげで〜」と、中国の外交官や外国人たちが連発する作りには、違和感も覚える。だがそれでも、中国外交が何を目指しているのかを知るためには、これ以上の「教科書」はない。

計4時間半にも上る番組で、日本に関する内容は、わずか3回しか出てこなかった。第1話で「中日韓外交を進めている」と言って、習近平主席が安倍晋三首相と握手するシーンが0.5秒ほど。第5話で「AIIB(アジアインフラ投資銀行)を発足させた時、57ヵ国も参加した」という説明の中で、「アメリカと日本が懐疑心を持っているにもかかわらず」という注釈が、やはり0.5秒ほどだ。

残り一つは、第4話『雲を穿ち霧を破る』で、日本との尖閣諸島問題を、10分ほど取り上げている。

やや長くなるが、習近平が尖閣諸島問題をどう捉えているかが如実に表れているため、この番組の尖閣諸島に関する部分を全訳してみた。なお、発言者の記述がない部分は、ナレーションである。また尖閣諸島は番組では、中国の呼称である「釣魚島」(デイァオユイダオ)を使っているが、尖閣諸島と同意である。

「日本による『尖閣国有化』は茶番である」

〈海は風雲急を告げていた。中国の法律執行船は釣魚島に向かって、蛮勇の前進を行っていた。

中国の法律執行船は、釣魚島の海域にいる間、日本の海上保安庁の巡視船から何度も、無線を通じて警告され、退出するよう要求される。

しかし中国の法律執行船は決然と、疑いようのない回答をする。

中国海警の金湛隊員が語る。

「向こうが日本の海上保安庁の巡視船で、こちらが中国海監の編隊です。中国海監の編隊は、いままさに中国の管轄する海域をパトロール中なのです。

(拡声器で)『あなたの船はすでにわが国が管轄する海域に入っている。あなたの船はわが国の法律法規を遵守せねばならない!』」

金湛隊員は、1988年に生まれた。日本側の「怒鳴り声」を浴びながらも、中国の主権を宣示する職責を担っている。2013年、金隊員は「拡声係」として、この道に入った。

「われわれが朝、領海に入ると、すでに日本船が待ち受けています。彼らの身分を確認した後、われわれのリーダーの指示で、すぐにこちらからも主権を主張するのです」

釣魚島海域でパトロールする中国の法律執行船は、高波に遭遇するばかりか、複雑で変化の激しい海上の情勢の中で、警告を発する作業も強いられる。

中国の法律執行隊は、千里の波風も恐れず、今日も明日も、釣魚島のパトロール任務の中で、勇敢に立ち向かい、国家の主権を固く守ろうとしている。

2012年9月11日、東京。日本政府は、中国側が強く反対し、再度の厳正な交渉を求めているにもかかわらず、2012年の予算から20.5億円を拠出し、釣魚島(尖閣諸島)の本島、北小島、南小島の3島を、「国有財産」として「購買」した。

前世紀70年代、中日の先輩世代のリーダーたちは、大局に鑑み、「釣魚島の問題は放置し、後の代の解決を待とう」という重要な了解と共通認識に至った。

ケ小平はこう言った。

「われわれが中日国交正常化を成し遂げた時、双方が、この問題に干渉しないことを約束した」

中国社会科学院中国国境研究所の李国強所長が語る。

「これこそが有名な、『擱置争議、共同開発』(争議を棚上げし、共同開発する)だ。それなのに2012年になるや、日本は『島の国有化』をぶち上げ、釣魚島の主権問題の衝突を激化させたのです」

http://gendai.ismedia.jp/articles/-/52928

>>2以降に続く)