「料理の味はいいが、トイレのせいで気分が台無しだった」

9月14日午後、飲食店が密集するソウル・鍾路の蒸し鶏専門店。2人前2万8000ウォン(約2700円)の蒸し鶏を注文してから手を洗いに行ったフランス人男性エリックさん(31)=仮名=はトイレの前で顔をしかめ、首を左右に振った。

店の奥の狭い通路を歩いていくと男女共用トイレがあった。便器の近くには使い終わったトイレットペーパーがゴミ箱からあふれていた。エリックさんは「トイレから出たところ、女性客が待っていて気まずかった」と言った。

エリックさんは「私が『ベストメニューは?』と聞いた時、店長が『ファストメニュー』と聞き間違えたのは我慢できたが、トイレは本当に耐えがたかった。メニューにはその店の歴史について英語で書かれていたが、肝心の料理については写真や英語の説明がなくてもどかしかった」と言った。

エリックさんは40項目ある飲食店チェックリストに評価を入力し、「どんなにいい点を上げたくても、10点満点で3−4点以上は難しい」と語った。

エリックさんは韓国観光公社が2018年の平昌冬季五輪を前に、外国人観光客に人気の飲食店の品質やサービスをチェックするため「潜入調査」をする「ミステリー・ショッパー(Mystery Shopper)」だ。フランスのボルドー地方出身で、韓国生活は6年目になる。

韓国語は流ちょうだが、初めて韓国を訪れた観光客を装って店の隅々までチェックする。本紙取材陣がミステリー・ショッパー6人に同行取材した。

■外国人向け案内表示がない飲食店

同日午後、ソウル市鍾路区内にあるチゲ(鍋料理)店。土鍋で煮込んだチゲが有名で、会社員や日本人観光客が多く訪れる人気店だが、店の外には外国人のための案内表示がなかった。壁に貼ってあるメニューには、韓国語の下に日本語でチゲの名前があった。

スンドゥブ(寄せ豆腐)チゲを注文した米国人女性クリスティンさん(29)=仮名=は「店員が台ぶきんでテーブルをふいたが、汚くて携帯電話を置くこともできなかった」と言った。スープのはねを防ぐエプロンは既に多くの人が使ったかのように汚れていた。床には客が捨てたティッシュがあちこちに落ちていた。

クリスティンさんはチゲをひとさじ口に入れて出してしまった。「熱すぎて口の中をやけどするほどだったのに、店員は誰も事前に教えてくれなかった」という。

中国人留学生のピさん(21)さんとリンさん(20)はソウル市江南区にあるトッポッキ(もちのトウガラシみそいため)屋に行った。シーフード・トッポッキを注文した2人は「辛さの度合いもメニューに書かれているといいのに」と言った。

中国の有名ブロガーが紹介したサムギョプサル(豚バラ焼肉)専門店に行ったところ、ヘムルチム(海鮮蒸し煮)店に変わっていた。リンさんは「韓国では、有名な店だと聞いて実際に行っても、閉店になっていることがよくある」と語った。

ミステリー・ショッパーの中には韓国人もいる。外国人が見過ごしてしまう問題点を見つけるためだ。大学に復学したチョンさん(27)とキムさん(25)は駅三洞の中国料理店を訪れた。2人がいすに座ると、店員はいきなりキムチチゲを出した。チョンさんが抗議すると、店員は「ランチタイムはメニューが1種類で、今日はキムチチゲの日だ」と言い返した。

インターネット上で「おいしい」と言われているこの店は、ランチの売り上げを増やすため、中国料理ではなく近所で働くサラリーマンたちをターゲットにした「定食屋」のような営業をしていたのだ。店の前には「今日のメニュー」とだけ書いてあり、テーブルにはメニューそのものがなかった。

チョンさんは「キムチチゲは酸っぱくて、ご飯と一緒に食べるにはコショウのにおいがきつかった。外国人の友達がこの店に行こうとしていたら引き止める」と語った。

■訪韓外国人観光客、料理の満足度が最低

政府が昨年発表した「外国人観光客実態調査」によると、韓国観光のさまざまな分野のうち、料理に対する満足度が特に低かったという。韓国を訪れた外国人観光客が韓国料理に満足していない最大の理由は「辛すぎる」(46.1%)=重複回答=だった。

http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2017/10/04/2017100400095.html

(続く)