>>1の続き)

「最悪のシナリオ」はもう一つある。

米国がギリギリの段階で軍事攻撃を取りやめ、米朝で対話することだ。

1993年の核危機では、94年6月に米元大統領のジミー・カーターが電撃訪朝して北朝鮮主席の金日成と会談し、これがその後の米朝枠組み合意につながった。日本は蚊帳の外に置かれたまま、資金援助だけを求められた。

現在も米国内では民主党を中心に対話路線を求める声は少なくない。一部には、「北朝鮮に最小限の核保有ならば容認すべきだ」との声もある。

米大統領のドナルド・トランプは過去の対話路線を全く評価しておらず、批判を続けているが、土壇場で対話路線に転じる可能性はなお捨て切れない。根っこに自国の利益を最優先させる「米国ファースト」があるからだ。

米朝対話で、米国が最も脅威に感じる大陸間弾道ミサイル(ICBM)や水爆の放棄などと引き換えに、金正恩体制の存続と支援を約束したらどうなるか。

場合によっては、自衛のための最小限の核保有を認める可能性もある。さらにノドンなどの短距離弾道ミサイルの保有が黙認されると、日本は今後も北朝鮮の核・ミサイルにおびえ続けることになる。

首相の安倍晋三とトランプの信頼関係を考えると、米国が日本抜きで対話路線に切り替える可能性は小さい。だが、今回の衆院選で、日米同盟に批判的で、「安保関連法は憲法違反」などと主張する勢力が多数派となったらどうなるか。日米関係は一気に冷え込むに違いない。

ダモクレスの剣は国会議事堂の天井にもぶら下がっている。(敬称略、田北真樹子)

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(おわり)