解散総選挙に揺れる日本はどうあるべきか――。

10月13日付記事『鳩山元首相、安倍首相を猛烈批判…「北朝鮮の脅威を煽っている」「貧富の差を拡大」』では、元首相で東アジア共同体研究所理事長の鳩山友紀夫氏に、安倍晋三政権の問題点や北朝鮮情勢への対応について話を聞いた。

今回のテーマは中国だ。鳩山氏はかねて「日中友好」を唱えているが、世界で存在感を高める中国に日本はどう向き合うべきか。また、中国が推し進めるアジアインフラ投資銀行(AIIB)や一帯一路といった政策に日本は参加すべきなのか。再び鳩山氏の話をお伝えする。

「日本は中国の領海侵犯を事前に了承済み」

――日本と中国との関係も重要です。巷間では「中国脅威論」が喧伝されていますが、今や中国は東京クラスの大都市を多く抱えるなど、大国としての地位を築いています。脅威を煽るのは、得策ではないのではないでしょうか。

鳩山友紀夫氏(以下、鳩山) 中国は日本と違って巨大な面積を有する国ですから、紛争を起こすのは得策ではありません。確かに、尖閣諸島をめぐる領海侵犯などの問題もあり、日本国内で中国脅威論がひとつの世論になっています。

しかし、アメリカも中国も表では言い合っていますが、定期的に共同軍事演習を行うなど、実は日米並みに協調している現実があります。また、中国の領海侵犯は事前に日本側に通告され、決まって月に3〜4隻が航行しています。そして、1時間ぐらいで領海から出ることになっています。

中国としては、「尖閣諸島は我々の領土だ」と主張しているからこそ、このような行為を行っているわけです。日本と中国は互いに領有権を主張する一方で、実は互いに相手国の領海航行を了承しているのです。ただし、建前上は「許しがたい行為」と言う必要があるため、日中は互いに了解しつつも非難し合っているのが実情です。

そのため、尖閣諸島の問題をめぐって中国脅威論を煽りすぎると、冷静な判断が欠けてしまいます。もともと、中国では尖閣諸島の問題は棚上げされていました。しかし、野田佳彦政権時の日本が国有化したことで、中国内の棚上げ論が事実上空中分解してしまったのです。

そのため、日中関係はしばらく冷えきっていましたが、今や多くの中国人が日本を訪れ、買い物をしたり温泉に入ったりして日本を満喫しています。訪日中国人観光客は日本びいきになって帰国し、中国で日本の良さを伝えています。そうした状況も踏まえて冷静に判断すれば、中国脅威論は国益に沿うものではありません。

「日本はAIIBに参加すべき、孤立している」

――中国主導のAIIBについて、日米は距離を置いています。鳩山理事長はAIIBの顧問を務めていますが、この姿勢についてはいかがですか。

鳩山 「ユーラシアを発展させて平和に導いていく」という習近平国家主席の構想は、実現するとすれば素晴らしいことです。しかし、世間の中国脅威論やアメリカが未参加という事情から、日本はいまだにAIIBに参加していません。

しかし、実はドナルド・トランプ大統領はAIIBに好意的なメッセージを寄せています。6月に行われたAIIBの年次総会で、金立群総裁は「アメリカは、アジア開発銀行(ADB)の予算を削る必要がある。そのため、すぐにAIIBに参加するのは難しいが、AIIBの業務案件にはアメリカの企業も配慮する」と言っていました。

つまり、アメリカは日本が主導するADBの予算を削るため、一方でAIIBに参加するというのは難しい。しかし、アメリカ企業がAIIBの投資業務を受注することで国内の世論も参加にかたむくという構図です。AIIBについては、今や日本だけが孤立しているのが実情です。アメリカの後塵を拝することがないように、参加すべきです。

日本はADBを通じて国際投資のノウハウも人材も豊富に持っているため、AIIBに的確なアドバイスをすることが可能です。だからこそ、中国は日本の参加を期待しているのですが、自民党内でも意見が分かれています。

二階俊博幹事長は参加に前向きで、安倍首相は「条件が整えば」とのことですが、麻生太郎財務相は懸念を示しています。党内が分裂している状態を解消して、アジアの発展のために日中が手を組むことが必要です。

http://biz-journal.jp/2017/10/post_20943.html

(続く)