慶尚北道慶州市の慶州和白コンベンションセンター(HICO)には、今月31日から開かれる「世界遺産都市機構世界総会」と9月22日に終了した「大韓民国国際水週間」の看板が懸かっており、現在はまるで何のイベントも開催されていないかのような錯覚に陥るほどだ。しかし、建物への立ち入りは警備員が厳しく規制されている。ゲートには「通行証を持つ人のみ入場可」と書かれている。その上には2.5センチメートルの大きさで「WANO」という文字が書かれ、イベントを暗示しているが、一般人には何が開かれているのか到底分からない。

 ここでは「原子力発電所の五輪」と称される世界原子力発電事業者協会(WANO)の総会が開かれている。14日のレセプションを皮切りに34カ国、122の原発業者の最高経営責任者(CEO)など原子力業界のリーダー約500人が出席するイベントだ。韓国水力原子力が2014年に誘致したWANO総会は、韓国の原発技術の安全性、経済性を世界にアピールする場として期待されていた。しかし、韓国政府が脱原発政策を掲げ、新古里原発5・6号機の工事中断を目指している状況で、韓国水力原子力はPRを中止し、総会は冷遇される格好となった。韓国水力原子力は15日になって、「全世界の原発業者のCEOや幹部500人以上が参加する」という内容のA4で1枚の短い報道資料を配布しただけだ。

 慶州市の中心部でもWANO総会が開かれている形跡は見えない。WANO総会では歓迎レセプション、本部および地域別の理事会、セッション別のテーマ発表・討論会などが開かれ、18日から21日までは原発施設の見学などが行われるが、そうとは思えない雰囲気だ。会場周辺の住民でさえ、WANO総会は初耳だと話している。

韓国政府は関心ゼロだ。原発を管轄する産業通商資源部(省に相当)の白雲揆(ペク・ウンギュ)長官はもちろん、次官級も出席する計画はない。9月27日の国会産業通商資源・中小ベンチャー企業委員会全体会合で、白長官は「WANO開催国で中央政府の高官が出席した前例はなく、韓国水力原子力からも出席要請がなかった」と述べた。同委の張秉浣(チャン・ビョンワン)委員長(国民の党)などは「白長官がWANOの行事で祝辞を述べることが国益につながる」と出席を促したが、白長官は結局出席意向を示さなかった。同委に所属する尹漢洪(ユン・ハンホン)国会議員(自由韓国党)は「韓国の原発技術を批判し、原発が安全ではないと宣伝する政府から閣僚が出席しないことは予見していた。韓国水力原子力の要請がなかったというが、大統領や長官の顔色をうかがえば、同社が出席を要請することなどできただろうか」と指摘した。

 慶熙大原子力工学科のチョン・ボムジン教授は「WANO総会を開催したこと自体、世界の原発業界の代表に韓国の原発の優秀性をアピールする機会なのだが、担当閣僚が出席せず、大統領と政府が連日原発の危険性を強調していながら、口先だけで原発輸出を支援すると言うのは二律背反だ」と話した。ソウル大原子核工学科の朱漢奎(チュ・ハンギュ)教授は「ライバル国の中国は原発受注に向け、首相級が乗り出すなど首脳外交を展開している。対照的に韓国政府の姿勢は原発の輸出機会を逃すどころか、自ら投げ出しているようなものだ」と評した。

 一方、新古里原発5・6号機の工事再開をめぐる公論化委員会は15日午後、忠清南道天安市で市民参加団による2泊3日の総合討論会を終えた。第4次アンケートまで終了し、検討結果は20日午前に発表される。

慶州=アン・ジュンホ記者

2017/10/16 09:53 朝鮮日報/朝鮮日報日本語版
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