>>1の続き)

ここまで政治化し不公平な決議を出していくユネスコに抗議を表明していくのは正当なことではある。しかし、「脱却」が適切な選択なのかは熟慮しなければなるまい。

脱却あるいは分担金を支払わなければ発言権はなくなり、チャイナ・マネーで権限を増やしていく中国に有利になっていくことは明らかだ。それ以外の抗議の表明の仕方を選ばないと、何もかも中国の思う壺となる。

日米が抜けてユネスコを骨抜きにしようとしても、中国はチャイナ・マネーと一帯一路構想により、ヨーロッパを含めたその他大勢の国々を惹きつけている。

このままでは習近平の思惑通りに世界が動いていくことになる。

ワシントンを中心に「天安門事件を世界記憶遺産に」と頑張っている中国人民主活動家たちの願いも、これにより踏みにじられていくことだろう。

拙著『習近平vs.トランプ 世界を制するのは誰か』に書いた危機感は、現実のものになろうとしている。

それを可能にさせているのは日本

これを許したのは、ソ連崩壊以降の、そして天安門時間以降の窮地に追い込まれた中国に手を差し伸べた「日本」だ! 天皇陛下訪中まで断行して、中国を助けた。

今もなお安倍内閣は、「日中韓三か国協議のため李克強首相を日本に招聘できるかもしれないこと」や「習近平国家主席訪日を実現させることが出来るかもしれないこと」を政治業績として挙げているようだ。

中国が日中戦争時代、日本軍と共謀して共産党を強大化させた事実が世界に知られてしまうことを恐れて言論弾圧を強化している中国に、なぜ日本は平身低頭、へつらわなければならないのか。

国家安全保障を本気で考えるのなら、その中国に「歴史の真相」を突き付ける勇気を持たなければならない。そしてトランプを説得し、堂々と意見を言える日本にならなければならないはずだ。

そうでなければ世界を制覇した中国が、日本の安全保障を脅かす日が目前に迫っている。

一帯一路に賛同するなど、中国に媚びている場合ではない。日本は大局を見失わないでほしい。

[執筆者]遠藤 誉
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会科学研究所客員研究員・教授などを歴任。

(おわり)