2012年12月の政権交代から続く安倍晋三政権。9月28日の臨時国会冒頭で衆議院を解散、「消費税の使いみちの見直し」「北朝鮮問題への対応」を大義にするかたちで、電撃的に“伝家の宝刀”を抜いた。この総選挙で、日本はどう変わるのか。

前回、前々回の記事では、元首相で東アジア共同体研究所理事長の鳩山友紀夫氏に話を聞き、アベノミクスの功罪や日中関係の重要性についてお伝えした。今回は憲法改正や分裂した民進党のゆくえ、首相時代の焦点でもあった沖縄問題について、さらに鳩山氏の話をお伝えする。

「東アジア共同体のためには改憲も必要」

――憲法改正についてうかがいます。安倍首相も鳩山理事長も改憲論者ですが、両者には大きな違いがあります。安倍首相が掲げる9条の改正について、どう思いますか。

鳩山友紀夫氏(以下、鳩山) 確かに、私も安倍首相も憲法改正を唱えており、私は05年に『新憲法試案―尊厳ある日本を創る』(PHP研究所)を刊行しています。しかし、安倍首相の考えとは大きな相違があります。安倍首相は加憲、つまり「自衛隊の存在を憲法で明記する」ことから憲法改正を実現しようとしていますが、その狙いは国家の権限を強化しようというものです。

一方、私は国民の権利を拡大する意味での改憲です。改憲するにあたっては、日本はどのような国家像を目指すべきかを議論することが大切です。私は、将来的に東アジア共同体をつくり、国連のような国や地域を超えた組織をつくり上げることを大きな夢として持っています。

東アジア共同体では、EU(ヨーロッパ連合)におけるユーロのような単一通貨を発行し、将来は通貨の発行権や自衛隊などの組織も共同体に移管することを目指します。そのような東アジア共同体を実現するためには日本の国家像を変革し、また改憲も行う必要があるでしょう。

ただし、首相というのは行政のトップであり、憲法を遵守する義務があります。その首相が「いつまでに憲法を改正する」と言うのは問題があります。私は、首相在任時は改憲の時期などについて言及することはありませんでした。

本来であれば、国会議員一人ひとりが今の憲法について「改正すべき」「改正すべきではない」、あるいは「改正するのであればどのような内容にすべきか」について、具体的に考える必要があると思います。

「小池都知事は首相になりたいのでは」

――民進党は9月の代表選挙で代表の座が蓮舫氏から前原誠司氏に替わり、すぐに解散総選挙になりました。

鳩山 代表が替わっても、民進党の前途は多難です。旧民主党時代、私が首相を辞任して菅直人氏に引き継いだ後、菅政権は消費税増税をうたって参議院議員選挙で過半数割れするなど敗北しました。その後、TPP(環太平洋経済連携協定)参加、原発再稼働、尖閣諸島の国有化などの政策を見ると、やっていることは自民党と変わりません。

菅政権、野田佳彦政権は、今の安倍政権のベースをつくったといっても過言ではないでしょう。そのため、今の民進党は安倍政権を批判しても、それがすべて自分たちに跳ね返ってくるわけで、自民党との主張の違いを明確にすることができません。安全保障についても、前原代表は「日米同盟は重要であり、中国は現実的な脅威だ」という考えですから、自民党とほぼ一緒です。

とはいえ、私も「日米関係は重要」という見方には賛成です。世間からは「アメリカ嫌いなのでは」と誤解されているようですが……。実際は、そんなことはありません。ただし、外交は日米だけでなく中国をはじめとする他国との連携が必要なのです。

――自民党を離党した若狭勝氏と民進党を離党した細野豪志氏が中心となって動き、代表には東京都の小池百合子知事が就任した「希望の党」については。

鳩山 新党については、やはり小池知事の存在感や知名度なくしては大きな躍進は望めません。私は、小池知事には「できれば首相になりたい」という希望があると思っています。そのため、将来的に国政に復帰する可能性もあるのではないでしょうか。

ただ、私は小池知事の築地市場移転をめぐる対応については合点がいきません。

http://biz-journal.jp/2017/10/post_20982.html

>>2以降に続く)