「韓国の裏切り」は20年以上前から始まった。それが激しくなるたびに米国は「通貨」でお仕置きしてきたのだ。

すべて中国に筒抜けだ

1997年の通貨危機の際、米国はなぜ、韓国を助けなかったのでしょうか。

鈴置:「『14年前のムーディーズ』に再び怯える文在寅」で指摘した通り、米韓関係が悪化していたからです。米国は韓国にお灸をすえるため、IMF(国際通貨基金)による救済に追い込んだのです。

関係悪化の原因は貿易摩擦ですか?

鈴置:それもありました。でも、韓国が軍事的に米国を裏切って中国に接近したことが大きかった。

 1990年代半ば、米国の国防関係者が日本政府に警告が発しました。韓国が――当時は、金泳三(キム・ヨンサム)政権(1993―1998年)でしたが、日米の軍事機密を中国に漏らしているというのです。訪日した米国防族の大物が以下のように語りました。

・米韓が高官級の軍事協議を実施すると、その直後に韓国の情報機関のトップが極秘訪中し、江沢民主席と面談、米韓協議の内容を伝えている。
・それを我々は黙って見ているのだが、韓国は露見したことに気づいていない。
・今後、日本は韓国に軍事機密を漏らしてはならない。漏らせば、すべて中国に筒抜けになる。

 この話は自衛隊の第1線部隊の指揮官にも広まっていましたから「寝返った韓国に気をつけろ」との指示が下りたのかもしれません。軍事機密を敵国に渡す、いわゆる「スパイ」は常にいます。しかし韓国の場合、個人ではなく、政府によるタレこみでした。

 2006年に聞いた話ですが、中国の人民解放軍の幹部が自衛隊幹部の前で「なぜ、韓国の軍人は頼みもしないのにどんどん機密を持ってくるのだろうか」と首を傾げたそうです。中国人も驚いていたのです。

卑日も中国頼み

なぜ、金泳三大統領は中国にゴマをすったのでしょうか。

鈴置:米国一辺倒だった外交の幅を広げる狙いでした。執権開始の前年の1992年、韓国は中国と国交を回復しました。金泳三政権はこれをテコに米国や日本を牽制しようとしたのです。久しぶりの非軍人出身の大統領でしたから「民主化」を要求してきた米国に、気兼ねする必要がなくなったこともあったでしょう。

そういえば、江沢民主席を後見人にして日本を批判しました。

鈴置:1995年11月14日にソウルで開いた中韓首脳会談後の会見で、金泳三大統領は「日本の腐った根性を叩き直す」と発言しました。

 共同会見の場ですから、江沢民主席がすぐ横に立っていました。日本に対しては文字通り、トラの威を借りて凄んで見せた。一方、江沢民主席には「中国と組んで日本を叩きます」と媚を売ったわけです。金泳三政権は韓国の「離米従中」の元祖となりました。

しかし、軍事機密を中国に漏らすとは。

鈴置:属国意識です。金泳三政権に限らず、韓国人は基本的に中国に「媚びる」姿勢で接します。韓国人が中国と接する様を見ると「蛇に睨まれた蛙」を思い出します。反日デモや反米デモは年中起きますが、反中デモはまずありません。韓国人にとって、中国は怖い国なのです。

 恐ろしい中国に睨まれたくない。何とか歓心を買いたい――。そんな韓国人の心の奥深くにある感情が機密漏洩を起こすのです。井上靖の歴史小説『風濤』は「元」に侵攻された高麗を描きました。これを読むと、抗うことのできない地続きの巨人に対する小国の人々の精神状態がよく分かります。

 強者の顔色をうかがうほか生き残る術がない、との絶望感です。島国の住人である日本人は「地続きの超大国」の圧迫感をなかなか理解できないのですが。

IMFに追い込む

どんな情報が韓国経由で中国に渡ったのでしょうか。

鈴置:日本の政界では「日米が共有する潜水艦の音紋」との説が流れました。ただ実務家から、この情報の確認はとれていません。そこで記事にはせず、近未来小説『朝鮮半島201Z年』(2010年11月刊)に盛り込んだのです。48―49ページです。

いずれにせよ、米国は韓国の裏切りに怒り、通貨危機の際に助けなかったわけですね。

http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/226331/101700133/

>>2以降に続く)