米紙ワシントン・ポスト(WP)は18日(現地時間)、来月7−8日に来韓するトランプ米大統領が南北軍事境界線を挟む非武装地帯(DMZ)を訪問するかどうかについて「文在寅(ムン・ジェイン)政権がトランプ大統領のDMZ訪問に反対している」と報じた。

ホワイトハウスは先ごろ、トランプ大統領の来月のアジア歴訪を「北朝鮮に圧力をかけるためのツアー」と説明したが、対北圧力の象徴ともいえるDMZ訪問を明らかにしていないため、内外で様々な憶測を呼んでいる。

WPは「トランプ大統領のDMZ訪問をめぐって米政府内では賛成・反対の意見がある」とした上で「ホワイトハウスは韓国の文政権と米国務省の反対に遭った」と書いた。

反対の理由は、トランプ大統領のDMZ訪問が、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長との緊張をさらに高める恐れがあるからだ。

WPは「文大統領の側近たちは、トランプ大統領のDMZ訪問が北朝鮮に誤解されて軍事衝突を招く可能性があることや、意図しない結果をもたらすことを恐れている」として「(意図しない結果とは)アジアの金融市場への打撃や、平昌冬季五輪計画に支障が出ること」と指摘した。

また韓国政府は、今後行われる在韓米軍の防衛費負担交渉を意識し、トランプ大統領による平沢米軍基地の訪問を望んでいるという。韓国政府は、米軍の海外基地の中でも世界最大規模とされる平沢基地の建設費の半分以上に当たる8兆9000億ウォン(現在のレートで約8800億円)を負担した。

しかしWPは、ブッシュ政権とオバマ政権の外交専門家らの話を引用し「DMZに行かないのはばかげた行動だ。DMZを訪れれば韓国軍と米軍だけでなく北朝鮮に対しても重要なメッセージを送ることになる」とした。北朝鮮の核・ミサイル危機が高まる中、DMZは韓米同盟が堅固であることを示せる場所というわけだ。

1983年のレーガン元大統領の来韓以降、米国大統領でDMZを訪れなかったのはブッシュ父元大統領だけだ。ただしブッシュ氏はレーガン政権で副大統領を務めた際にDMZを訪れている。

1993年にDMZを訪れたクリントン元大統領は「北朝鮮が核兵器を使用するなら、彼らは終わりを迎えるだろう」と述べ、1976年にポプラ事件(北朝鮮兵が米軍兵士2人を斧で殺害した事件)が起きた「帰らざる橋」まで歩いた。

2002年にはブッシュ元大統領(息子)が、12年にはオバマ大統領がDMZを訪れた。ペンス副大統領も今年4月に二人の娘を連れて板門店を訪問した。

トランプ大統領が予告なしにDMZを訪れる可能性もある。「サプライズ」を好むトランプ大統領としては、北朝鮮にメッセージを送るに当たってDMZほど効果的な場所はないからだ。

トランプ大統領の来韓中のスケジュールは、8日午前にソウル・汝矣島で国会演説を行うこと以外には公表されていない。同日午後に中国に向かう前にDMZを訪れる可能性もある。トランプ大統領の歴訪に備え、下見チームも近く韓国を訪れるという。

外交筋は、トランプ大統領のDMZ訪問は現段階では不透明だとしながらも、予告なしに突然訪問することはあり得るとの見方を示した。トランプ大統領は16日、DMZ訪問に関する記者の質問に対し「現時点では細かい日程は決まっていない」と述べるにとどめた。

これに関連し、韓国大統領府(青瓦台)の関係者は「トランプ大統領のスケジュールは米国が決めるため、韓国側がどうこう言えるものではない」とした上で「首脳会談など主なスケジュールを除いては米国から連絡がきていない」と説明した。青瓦台の警護関係者も「DMZ訪問については現段階では話し合われていない」と述べた。

しかし、文正仁(ムン・ジョンイン)大統領特別補佐(統一・外交・安全保障担当)など青瓦台高官の一部は、韓半島(朝鮮半島)の緊張が高まる可能性があることを理由に、トランプ大統領のDMZ訪問に反対しているという。

韓国政府筋は「DMZよりも平沢米軍基地を訪問したほうが、無駄に緊張を高めることもなく、韓米同盟が堅固であることを示す上でも効果的ではないかとの意見が出ているようだ」と述べた。

ワシントン= 趙儀俊(チョ・ウィジュン)特派員 , イ・ミンソク記者

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