>>1の続き)

一部の方々からは批判されるかもしれませんが、特に北朝鮮という国の特殊な事情に鑑みて、人定事項や入国目的の確認が非常に困難なケースの場合は、収容期間が例外的に長くなってしまうケースが出てくることはやむを得ない、と私は思います。

いずれにせよ上記のような北朝鮮幹部や工作員などは(少なくとも金正恩体制が続く限りは)「迫害のおそれ」が無いので、そもそも「難民ではない」ことは強調しておきたいと思います。

3)「不法難民」とは誰のこと?

麻生副総理がどういう人達のことをさして「不法難民」と言ったのか定かではありませんが、もしパスポートやビザを持たずに不法に入国してきた難民のことを指しているのであれば、国内法的にも国際法的にも完全に間違いです。

「不法に入国してきた難民を処罰してはならない」という原則(難民条約第31条)が、既に1951年から国際的に確立していますし、日本も1982年からその原則が国内法として施行されています。

ちなみに9月の副総理の「射殺」発言の直後、「武装難民」という概念の「ある」「なし」が一部で議論されました。

一般に「武装難民」という言葉は、ことに90年代からルワンダ危機などで顕在化した「難民の武装化」(armed refugees、refugee warriorsまたはmilitarisation of refugees)という現象で、

主に周辺国に難民として逃れた後、難民キャンプ内やその周辺で武器が流通し、キャンプ内で軍事訓練や母国に向けた攻撃準備が行われる問題をさしています。

漂着時に武器を携行している人をどう対処すべきかという議論とは、文脈が全く異なる概念です。

またそもそも、そのような概念の有無が問題なのではなく、実際に武器を携行している漂着民が来たらどう対処するのが「正しいのか」を考えるのが重要なことでしょう。

4)「武器の携帯」の可能性?

詳細は以前のブログを参照頂きたいですが、「武器を携帯している」だけでその人が難民でないとは言えません。自衛のために武器をもって辿り着く人や、北朝鮮軍部による強制徴兵制度を逃れてきた(元)軍人かもしれないからです。

もし安保法制に基づいて日本も「紛争当事国」となった場合には、国際人道法が適用し始めますが、ジュネーヴ条約第一追加議定書第50条によると「武器を携行していること」だけをもって直ちにその人を「戦闘員」(軍人)と見なすことはできません。

「直接的な攻撃行為に参加していない人は、文民として保護しなければならない」というのが国際人道法の原則であり、国際赤十字社が最近出した指針です。

そもそも今の北朝鮮の状況で何かの武器をもって舟で出国できる人は非常に限られると思いますが、仮に北朝鮮の軍人(あるいは民兵や便衣兵)と疑われる人が武器を携帯している状態で日本の領海に入域したら、まず武器放棄を命じて、どうしても必要であれば威嚇攻撃の上、拘束し収容する、というのが順当な手続きでしょう。

5)難民はテロリスト?

世界にはテロリストの定義がありませんので網羅的な統計資料はないのですが、欧州諸国で起こっている「テロ事件」は、いわゆる「ホーム・グロウン・テロリスト」すなわち自国民あるいは移民の2世・3世などによるものが殆どです。

その国の社会経済政策に極端な不満を持っている者、またはひどい外国人差別などの被害者が、自暴自棄になって起こしたものです。テロの原因は「彼らが外国人だから」ではなく、「その国の社会経済政策や移民の統合政策が失敗しているから」です。

そもそも、日本には既に223万人以上の定住外国人がいますし、難民や庇護申請者も近年1万人以上、日本に来ています。彼らによる「テロ事件」というのは聞いたことがありますか?

少なくとも戦後に日本国内で起きた「テロ事件」は全て日本人によるものです。複数の市民が犠牲になった日本における大規模殺傷事件(例えばオウム事件、佐世保の乱射事件、「津久井やまゆり園」の事件)も、犯人は外国人ではありません。

また上の2)で書いた通り、体制幹部や工作員などは、武器は一切持たずに市民や戦争被災民を装って入国を試みると思いますので、そちらの方が質的には審査がずっと難しくなると思います。

少なくとも過去の事実に基づくのであれば、日本人によるテロ対策に力を入れるべきでしょう。

(続く)