右でも左でもないリベラルの独立勢力を

私は90年代の学生時代から、北朝鮮の核を「あぶない」と言い続けてきた。左翼ばかりの大学院では「右翼」とレッテルを貼られた。

第一次安倍政権のとき、今起こっているようなことが起きるのではないかと心配し、『右でも左でもないリベラルの独立勢力を』という本を出そうとした。

結局、刊行はしたが、「内藤さんは、いじめでしか知られていないから」ということで、『いじめと現代社会』という不本意なタイトルになった。

自腹を切って大量購入し、永田町の議員会館で行った国会議員向けの「いじめ講演会」で配ったり、同僚にたのみこんで大手雑誌社の編集長を紹介してもらったりもした。が、今どきそんなことが起きるわけがないだろうと一蹴された。

しかし――。第一次安倍政権のときに私が危惧したことは、第二次安倍政権ですべて起こった。

核戦争で日韓380万人が死ぬ

大部分の人は、核戦争が現実的な脅威になっていると理解できていないのではないか。

世界のシンクタンクは、北朝鮮対策は手詰まりであり、核戦争がかなりの確率で起こるのではないかと危惧している。アメリカのトランプ大統領は戦争をするつもりでいる、と思われている。直視するのがいやで、目を背けているのではないか。

北朝鮮関連の現状分析で有名なメディア「38ノース」は10月4日、もし核戦争がおきれば東京とソウルだけで最大380万人が死亡し、1360万人が負傷すると推定した。これは日本のメディアでも報じられている。

その分析を詳しくみてみると、東京だけで最大、180万人が死亡し、640万人が負傷すると推定している(38ノースは、第二次大戦で死亡した日本の一般市民は50万から80万と思われているとし、それと比較)。ここでの「負傷」は、広島長崎の原爆投下時のような、放射線と放射性物質による身体損傷を意味するだろう。

「ただちに」害がなくても、長期的にみて、放射性物質によって病気になったり、その結果死亡したりする人の数は、それより何桁も大きくなるはずだ。特に子どもの被害は、大人よりも格段に大きくなる。

いまやアメリカ本土に到達する長距離核ミサイルは完成間近であり、日本攻撃用の中距離ミサイルはすでに完成している。韓国は核を使うまでもなく、通常兵器で壊滅させることができるので、現時点で戦争になれば、核兵器は、もっぱら日本を攻撃するために使われるだろう。

戦争は敵の弱い部分を攻撃するものである。当然、原発攻撃をするだろう。北朝鮮は日本に届く程度の通常のミサイルを大量に保有している。それを一斉に日本の原発に向かって撃てば、日本中の原発が福島原発事故と同じことになる。つまり、日本中が高度汚染地域になる。

これらのことをきちんと認識したうえで、生き延びるためのむずかしい戦略を練らなければならない。

それでは現政権は、私たちの命を守るために何をやっているのであろうか。

安倍首相の奇妙な言動

トランプ大統領は9月の国連演説で、金正恩を「ロケットマン」と侮辱し、北朝鮮を「完全破壊」するといった表現を用いて挑発した。これを北朝鮮は「宣戦布告」と受け止め、戦争へとさらに近づいていく。

トランプ演説の直後、安倍首相はトランプ大統領に同調し、北朝鮮との対話は無意味で、北朝鮮に強い制裁を加え、世界で孤立させるべき、との挑発的な演説をした。その後、北朝鮮は日本を戦争の標的にする程度をエスカレートさせていった。

戦略的な利害計算としては、トランプ大統領の言動は乱暴で残酷であるが、アメリカの国益にかなっている。つまり、核ミサイルが日本にはとどき、アメリカ本国には到達しない開発段階で戦争にもっていくと、日本人と韓国人は大量に死ぬが、アメリカは無事である。

戦争の機を逃して北朝鮮がアメリカ本国に到達する核ミサイルを開発してしまったら、大変なことになる。だから、戦争を起こすために乱暴な言葉で挑発するのである(この分析に関しては、ガメ・オベール「八勺徳利とミサイル」を参考にした)。

これに対して、戦略的合理性という観点から、非常に奇妙な言動を示しているのが日本の安倍首相だ。

http://gendai.ismedia.jp/articles/-/53260

(続く)