2013年のネット選挙解禁後、2度目の衆院選。主戦場はSNSだ。自民党などが消極的に見える一方で、戦う姿勢を示す人たちがいる。

保守派の評論家、古谷経衡さんは、14年の衆院選に比べてSNSでの保守層の盛り上がりは小さく感じるといい、自民党自身もドブ板選挙に回帰していると話す。

「ネットに集票効果が多少あるのは参議院の全国比例くらい。選挙区が細分化された小選挙区制では、いくらネットで響いても勝敗には影響しないと分かってきたんじゃないでしょうか」

ネットに消極的になっているのは自民党だけではない。

希望の党は「ガバナンス長」という独自の役職を設け、SNSでの発信を統制すると報じられている。小池氏は自民党時代、広報本部長として、SNSなどの書き込みを監視・分析し、誹謗中傷には法的措置や削除依頼をするネット選挙の特別チーム「Truth Team(T2)」を指揮していた。

都民ファーストの会を離党したばかりの音喜多駿都議は、

「言論統制はある意味、自信のなさの表れ。もっと周りを信頼してほしかったです」

と小池氏への複雑な思いを語る。同会では、組織内で決まっていないことや混乱を招くようなことは発信しない、党に不利益を与えた場合は処分もあり得るという縛りがあったという。

「政治家のSNSは有権者が過去の発言の不一致などを検証するための判断材料になります。中長期的に見れば政治の質を向上させるはず。新たな政治のツールとして積極的に活用すべきです」(音喜多さん)

しかし、政治家の発言や投稿には人種・性別・障害者などに対する差別やフェイクニュースが含まれるものもある。これに警鐘を鳴らすのが、約40人の大学生・大学院生らからなる団体「反レイシズム情報センター(ARIC)」だ。

衆院選立候補者の過去の発言などを元にした「ヘイト政治家データベース」をネット上で公開している。

代表の梁英聖(リャンヨンソン)さん(35)は言う。

「政治家がヘイトや差別発言をすることで人々がまねをする、ということが多いんです。いかに政治空間から差別扇動が行われているかを可視化したかった。投票するときの判断基準にしてほしい」

アメリカではトランプ大統領の就任後10日で、偏見や憎悪に基づく犯罪行為「ヘイトクライム」が860件も発生したと報告されている。

前出のデータベースには、街宣活動などで政治家のヘイトスピーチを見たときに報告する窓口も設けられ、政治家のヘイト発言をSNSでシェアできる。ネットの双方向性を最大限に活用した仕組みだ。

衆議院解散後、

「この戦いは右か左かという古いイデオロギーの戦いではありません。上からの権力的な民主主義に対して、草の根からの国民の声に基づく民主主義をもう一度、立て直しましょう」

と街角で語りかける立憲民主党の枝野幸男代表に、人々が一斉にスマホを掲げる場面を多く見かけた。

写真と感想をフェイスブックでシェアするという大学非常勤講師の女性(60)とインスタグラムで動画を中継していた販売員の女性(26)はいずれも、リベラルの新しい受け皿としての同党への期待を語った。

会社員の男性(23)は、同党が「公式ツイッターのフォロワーを購入している」といううわさを検証して反論したことに共感し、初めて選挙の街頭演説に足を運んだという。

「今までリベラルってネットのデマもヘイトも受け流してたけど、戦えるんだなって見直しました。だってそのほうがずっとかっこいいですよ」(男性)

有権者にとっては、SNSの運営方針もそれぞれの党のマニフェスト。10月12日現在、立憲民主党のツイッターのフォロワーは約17万。自民党の12万、希望の党の1万に比べると、その注目度の高さは歴然だ。

タイムラインを流れる写真や動画、スピーチの書き起こしこそ、枝野代表の言う「草の根の民主主義」だろう。

https://dot.asahi.com/aera/2017101800066.html

>>2以降に続く)