長浜市高月町出身とされる江戸時代の儒学者で、日朝外交に尽力した雨森芳洲(ほうしゅう)の企画展が、高月観音の里歴史民俗資料館で開かれている。

ユネスコ「世界の記憶」登録に向けて申請中の「朝鮮通信使関連資料」のうち、三十六点の現物を公開。芳洲の思想や業績を紹介し、登録に向けて機運を盛り上げている。十二月三日まで。

申請資料は日韓合わせて三百三十三点。このうち、三十六点は長浜の顕彰団体「芳洲会」が所有する。一九二四(大正十三)年に芳洲の子孫から寄贈を受けた資料の一部で、その後に同館が管理。多くは重要文化財に指定されている。

芳洲の思想を知る上で重要とされるのが、朝鮮外交の心得を記した「交隣提醒(こうりんていせい)」。仕えていた対馬藩主に宛てた意見書で、朝鮮の風俗を理解し、偏見は抱いてはいけないという「誠信外交」を説く。

豊臣秀吉の朝鮮出兵は「無名(むみょう)の師(いくさ)」と喝破している。

「国書書改惣論(こくしょかきあらためそうろん)」は、江戸幕府儒官の新井白石との論争に関連する。朝鮮向けの将軍の称号について、「日本国大君」から、より地位が高い「日本国王」への改称を主張した白石に対し、芳洲は小藩の儒者でありながら反論。文書は、この出来事を自ら書き留めている。

唐服をまとった晩年の肖像画や、通信使の記録、若手外交官のために書き残したメモなども公開している。

「世界の記憶」登録は早ければ月内にも、ユネスコで審査される見通しという。学芸員の西原雄大さんは「自分の尺度だけで他国を見てはいけないという芳洲の思想は、当時はセンセーショナル。現代の国際感覚に通じている点が、芳洲のすごさ」と話す。

月、火曜と祝日の翌日は休館。高校生以上三百円、小中学生百五十円。十月二十八日午後一時半から、学芸員による展示説明がある。(渡辺大地)

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「世界の記憶」登録に向けて申請されている芳洲関連の資料=長浜市高月観音の里歴史民俗資料館で
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(左)朝鮮外交の心得を説いた「交隣提醒」(右)雨森芳洲肖像=いずれも長浜市高月観音の里歴史民俗資料館提供