SNSをめぐり、小学生の早期留学から博士課程に至るまで米国に留学する人が多い韓国ならではの悩み事が生まれた。最近韓国の複数のメディアが、「米国に留学したい場合はSNSに注意せよ」という内容の記事を掲載したからだ。

米国の大学が留学生を受け入れるかどうか審査する際に、SNSのIDを提出させてどのようなことを書き込んだのか、どのような発言にいいね!を押したのかチェックするというのだ。

そういえば6月には米ハーバード大学がSNSでの発言に問題があるとして、この秋に入学予定だった新入生10人以上の入学を取り消したことがわかった。ハーバード大学新聞 "The Harvard Crimson" に掲載され、世界中で話題になった。

ハーバード大学新聞によると、2016年12月大学側が入学予定者用にFacebook上で設けた公式グループの中に、プライベートチャットグループができた。このチャットのやりとりの中で暴力や民族・人種差別を美化する発言をした人がいた。これを大学側が見つけ、少なくとも10人に入学許可取り消しを言い渡したという。

記事によると、大学側は「合格者が道徳性や品性に疑問がある行動をした場合などを含め、大学には入学を取り消す権利がある」と説明したそうだ。またFacebookで同じグループにいた他の新入生たちは、大学側の入学取り消し決定に同意するとインタビューに応じていた。

韓国では、小学生の子供と母親が米国に留学、父親は韓国に残って送金係を務める「早期留学」をする家庭が多い。

富裕層の間では遠征出産といって、子供を米国で生み米国の国籍を持たせてあげることがステータスのようになっているが、そこまでできない家庭は早期留学で子供を米国で教育させたがる。世界に羽ばたける人材に育ってほしいからだ。

ソウル市内には米国留学を斡旋する会社が数えきれないほどあり、毎日のように米国留学説明会を開催している。ここでも、保護者に時間をかけて「子供のSNSをチェックして、問題になりそうな書き込みは事前に削除すべき」と説明しているという。

韓国メディアによると、「デジタル葬儀社」*に依頼して子供が作ったIDでネット上に書き込んだものを全て探しだして削除してもらったり、親が子供の名前でTwitterやFacebookに登録して入試でいい点数が取れそうなことを書き続けたり、子供の米国留学のためなら時間とお金を惜しまない親が少なくないという。
*個人の不要なインターネット上の履歴や、亡くなった人のインターネット上の投稿や足跡を削除する会社。「デジタルランドリー」とも呼ばれ、アメリカでは2012年ごろから、韓国では2013年ごろからサービスを提供する会社が現れた

ロイター通信の伝えるところでは、SNSは米国の大学入学だけでなく政府のビザ発給にも影響を与えるようだ。米国国土安全保障省は5月末からビザ発給の審査を厳格にするとして、申請者が過去5年間使っていたSNSのIDを届け出るように決定した。SNSの中身も審査対象というわけだ。

同省は国家の安全保障のため審査の厳格化が必要という立場で、「テロや他の国家安全保障に絡む在留資格の欠如に関連して追加審査が必要と判断された」場合のみSNSのIDを要請するというが、

韓国では「ビザ審査書類にあるSNS ID欄を空白のまま提出すると余計審査に時間がかかってしまうかもしれないので、予め当たり障りのないSNSのIDを作って備えよう」という雰囲気になっている。

米国向けビザ発給手続きを代行する法律事務所も、子供のSNSコンサルティングに乗り出した。米国の大学やビザ発給審査で問題にならないようにするためには、SNSにどんな内容を書き込めばいいのか。それは本人がピアノやバイオリンなどの楽器を演奏する姿を載せるのが一番だという。

子供に楽器の演奏を学ばせるほど金銭的余裕があり、クラシックをたしなむ教養ある家柄で育ったとアピールできるからだ。その他に、米国に親戚がいると書くのは不法滞在する可能性があるとみられるのでよくない、中東に関する風景写真・料理写真も一切掲載してはならない、といったことをアドバイスしていた。

米国に負けず韓国でもSNSはその人を評価する材料の一つになっている。

http://www.newsweekjapan.jp/cho/2017/09/sns-1_1.php

>>2以降に続く)