>>1の続き)

〈朝鮮総督府は1910年に会社令を制定し、会社を設立する際に朝鮮総督府の許可を受けるようにした。これは韓国人の会社設立を抑制することで民族資本の成長を防ぐための処置であった。
(中略)1915年には朝鮮鉱業令を制定し、鉱業権に対する許可制を実施した。韓国人の鉱山経営を規制しながら、金、銀、鉄、石炭など経済性のある鉱山はほとんど日本人が独占した。一方、高麗人参、煙草、塩などに対しては専売制を実施し、朝鮮総督府の収入を増やした〉(同前)

〈三井、三菱などの大企業はもちろん、日本の多くの中小企業も朝鮮に進出した。これらの企業は朝鮮の安い労働力を利用して大きな利益を上げた〉(『世界の教科書シリーズ39検定版 韓国の歴史教科書』明石書店)

収奪とテロリズム、そしてまた収奪の繰り返しで、日本統治時代の記述は終始します。日本が「民族抹殺政策」を行なおうとしたという記述も複数回登場します。

〈「民族抹殺政策を実施する」 中日戦争をきっかけに日帝は内鮮一体を打ち出し、皇国臣民化政策を本格的に推し進めた。内鮮一体は「日本と朝鮮は一つ」という意味で、韓国人を日王に忠誠をつくす臣下と民にするというものだった〉(同前)

韓国にとっての8月15日は、光復節(独立記念日)です。

〈日本は8月15日に連合国のポツダム宣言を受諾して無条件降伏を宣言した。これにより36年間日帝の植民支配を受けていた韓国はついに光復を迎えた〉
〈国を取り戻すために韓国人は日帝に立ち向かって絶えず闘争した。その結果、国を取り戻すことができた。しかし、これは韓国人の独自の努力で得られたものではなかった〉(同前)

独立運動と抵抗運動について非常に詳しく触れる一方、その熱量に比して、独立の日については、意外と冷静に書かれています。また、「独自の努力」だけでは独立できなかったと、ここでは一歩引いた視点から書かれているのは意外な感じに映ります。

現在韓国政府が問題としている事象が、非常に明確な形で開示されている点もこの国の教科書の特徴です。たとえば、「建国神話」の域に達している竹島問題に関しては、多くのページが割かれ、課題も設けられています。

〈日本政府は「独島を自国の固有の領土」と主張している。(中略)このような日本の主張を下記のインターネットサイトを参考に、歴史的根拠を示して批判してみよう。また、このような問題の解決のための方案を話し合ってみよう〉(同前)

この課題には、生徒たちが日本の主張を知っても、それらは、すべて論破できるものだという自信がよく表れています。また、慰安婦問題や徴用工問題など、まさに今ニュースを賑わす問題も取り上げられています。

〈日帝は徴用制を実施し、戦時に必要な労働力を強制的に動員した。韓国人青壮年は徴用で日本だけでなく中国、東南アジア、サハリンなどへ送られた。(中略)相当数の女性は戦地に送られて日本軍の軍隊慰安婦として利用された〉(同前)

この記述は、朴正熙政権の部分と合わせて読む必要があります。

〈朴正煕政府は国民の反対を押し切って韓日協定を批准した。その結果韓国は経済開発に必要な資金の一部を充当でき、韓米日共同安保体制が形づくられた。その反面、日本の植民支配に対する謝罪、略奪文化財の返還、日本軍「慰安婦」や強制徴用者などさまざまな問題を解決することができなくなってしまった〉(同前)

教科書に、「日韓の問題は解決することができなくなってしまった」とわざわざ記すところに韓国の歴史観の特異性が見て取れます。

このように韓国の歴史教科書では、自民族内での同質化の比重が非常に高いため、普遍性がありません。ありていにいえば、この教科書を学んでも世界と渡り合う客観的な知性や歴史観を持てるとは思えない。これが、中国やロシアの教科書との最大の違いです。

しかし、隣にこうした歴史観を持った国があることは、我々も改めてしっかりと認識しておかねばなりません。

http://bunshun.ismcdn.jp/mwimgs/6/7/-/img_67e93117ef55659808efa0a26f1008e7234212.gif

(おわり)