【論説】敵対関係から恒久的な平和友好関係確立へ。1972年9月29日、日中両政府による共同声明により日中国交正常化が実現した。あれから45年が経過した。確かに経済や文化的な結びつきが深まり、人の交流も盛んになった。

しかし、両国関係は政治的な関係悪化により、相互不信、憎悪の連鎖さえ生んでいる。45年前に両国が確認した「一衣帯水の両国」「善隣友好」の精神に立ち返り、関係修復を図るべきだ。

日中関係で興味深いデータがある。内閣府が実施している「外交に関する世論調査」だ。昨年11月の調査で、中国に対して「親しみを感じる」のはわずか16・8%、逆に「感じない」は80・5%に上った。

1970年代から80年代の中頃までは日中友好ブームを背景に米国と同様7割超が親しみを感じていた。だが、武力による民主化運動の弾圧が起きた89年の天安門事件以後、親近感が急速に冷え込み、5割台から4割台にまで減少した。

さらに、当時の小泉純一郎首相による靖国神社参拝や中国による東シナ海ガス田開発、強まる軍備増強、緊張感をはらむ海洋摩擦などの影響で2004年以降は3割台と低下傾向をたどっている。12年には尖閣諸島国有化で対立が先鋭化し2割を切った。今や距離感を感じるロシアを下回るほど冷え切っている。

だが、今後の日中関係の発展に関しては7割以上が「重要だと思う」と回答している点を重視したい。

中国は10年に日本を抜いて米国に次ぐ世界第2位の経済大国に成長。成長力低下や人口減少により減速していく日本は、中国の歴史的な台頭を冷静に判断する必要があるだろう。

同時に、中国は軍事力増強による無謀な領有権拡大など「力による現状変更」に走ってはならない。外交基本原則として主権尊重、相互不可侵など平和共存の5原則を60年以上掲げてきたのではないか。日中関係が重要な転換点にある現在、本腰を入れた友好再構築が喫緊の課題となる。

来年は日中平和友好条約締結40周年を迎える。政府は関係改善へ両国首脳の相互訪問を調整中だ。安倍晋三首相は7月の20カ国・地域(G20)首脳会合に合わせた安倍、習近平(しゅうきんぺい)国家主席会談で、習氏が推進する現代版シルクロード構想「一帯一路」に支持を表明。中国主導の国際金融機関、アジアインフラ投資銀行(AIIB)参加にも前向きな姿勢を示している。

ただ、両国関係に改善の兆しが見えるとはいえ、不透明さもある。今月18日開幕の中国共産党大会で習体制の権力基盤はさらに強固になっていくだろうが、指導部では権力闘争が激化している。日本への厳しい姿勢を軟化させるのは困難だ。安倍政権の台湾接近にも不快感を強めている。

一方で、日本も衆院選で「安倍1強」体制への逆風が吹く。いかなる状況になろうと日本は対話による外交力を高める必要がある。「未来志向」を確かな形にする好機と捉えたい。

http://www.fukuishimbun.co.jp/articles/-/246203